NovelFF9

クジャ×ジタン

君だけの時間
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結)
マーメイド
背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。
What's biting you?
クジャに噛み付いたジタンのお話。

今がずっと続いて欲しい・・・時々そう思うんだ。

なあクジャ、オレはあとどれだけお前と一緒にいられる?

このまま時が、止まればいい。



君だけの時間                           time1:Kuja

砂時計の残りは、あとわずか


ジタンと共にイーファの樹を脱出してから1年が経とうとしている。

「じゃ、行ってくる」
「ああ」

ノブに手をかけながら顔だけをこちらへ向けるジタン。開け放たれた扉 から差し込む光が眩しくて、僕は少し目を細めた。
あの出来事のあと、生き永らえることができた僕をジタンは甲斐甲斐し く世話してくれている。
僕は・・他のジェノムのように、黒魔道士たちの村へ居座るという選択 をしなかった。出来なかったと言っていい。

人はそう簡単に変われるものではないけど、自分の置かれている状況 がわからない程馬鹿でもない。いくら僕でも、散々虐げてきた黒魔道士 たちのホームで飄々と過ごすわけにはいかなかった。 ジタンもその事については口を挟むことはなかったが、その代わり自分 に面倒を見させろと言い出してきた。

本当に・・・君の考えていることは理解できないよ。
根っからのお節介・・・らしいといえばらしいけどね。

そうして、ジタンの世話になった僕は人里離れた所にひっそりと身を隠 した。だが、身を隠すとは言っても、あまりに人里から離れすぎるのも 問題のようだ。僕には深く関わり合いがないことだが、生活必需品を買 うことも考えなければならないとジタンが言っていた。

それに彼は週に何度かは仲間のいるリンドブルムへ足を運ぶ。そのた め、街への定期便が出ているということで、結局は黒魔道士の村から そう離れていない場所で僕らは生活していた。
今もいつものようにリンドブルムへ向かうジタンを見送ったばかりだ。

僕はといえば・・読書をしたり、天気のいい日は外を散歩してみた り・・。 何をするわけでもない毎日を過ごしている。けれど退屈かといえばそう でもない。静かに流れていく時間はかつて味わったことのないもので、僕には無縁のものだと思っていた。

しかしそれも長くは続かないだろう。

さらさらと、しかし確実に限られた時を刻む砂時計のように、あらかじめリミットを設けられた僕の魂もまた、ゆるやかに終末の時を刻もうとしていた。

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2004.2.22 開設