君だけの時間 |
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結) |
マーメイド |
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背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。 |
What's biting you? |
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クジャに噛み付いたジタンのお話。 |
オレは、ないものねだりをする子供でしかない
昔から、誰かにものをねだるということはしなかった。そんな環境じゃなかったしな。 自分の獲物は自分で奪う、これが鉄則だ。そのせいか、自然とオレは誰かにすがったり頼ったりすることとは無縁で、いつだってカッコつけて、妙に片意地張ることが癖になっていた。
弱い自分を悟られるのが嫌だった。
強がって意地張って・・本心を隠す。
本当はそんな自分に気付いて欲しいのに、肝心な時にいつも素直になれない。
今だって、馬鹿みたいに嘘をついて、くだらない演技をして、そんなことをしている間にクジャの寿命は迫ってきているはずなのに・・。
いつの間にか滲んできた涙で視界が少し歪んだ。
ふいに、ここに来る前のクジャの言葉を思い出す。
「行くのかい?」
「ん・・ああ・・・」
「・・ジタン、僕に何か言うことは?」
「は?・・・な、なんだよ・・・」
「・・・言いたくないならいいけどね。」
「・・・」
「ただ・・」
「・・?」
「もっと僕を頼って」
「・・・・」
気がつくと駆け出していた。 オレにっとって、その言葉は誰かにかけるものであって、誰かからかけられるものじゃない。
あいつは知ってたんだと思う。オレの間抜けな嘘なんかとっくの昔にお見通しで。
こんなことなら、妙な嘘なんかつかずにただあいつの腕の中にいればよかった。いつか放さなければならないその時まで、必死にしがみついて、オレを一人にするな・・ってガキみたいに泣きわめくんだ。
そんなオレに・・あいつはどう言うかな?
零れ落ちるまでになった涙を拭おうとした時だった。
「お姫様」
「・・・?」
振り返ると、そこにはクジャの姿があった。あいつにしては珍しく、肩で息をして。オレを必死で追ってきたんだろう。その瞬間、オレは一切の思考をやめた。
「君を泣かせたのは・・・どこのだれだい?」
「・・っ・・」
本当は欲しくて仕方がなかったその腕。
差し出された瞬間、無我夢中で飛びついて、そして言ってやった。
「お前だよっ・・」