君だけの時間 |
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結) |
マーメイド |
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背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。 |
What's biting you? |
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クジャに噛み付いたジタンのお話。 |
隠し事はお互い様、かもね
その時が迫っていることを告げるかのような、時折体を包む倦怠感と軽い眩暈。まだ隠せる範囲のそれは、今は僕だけの秘密。
幸いジタンは僕の異変に気付いていないようだ。ただ、最近ジタンの言動に気がかりなことがある。一月ほど前からだろうか・・わざと明るく振舞うのが目に付く。急に多弁になったかと思えば、言葉を詰まらせて僕から目を逸らす。隠し事でもあるのだろう・・君は本当にわかりやすい。
そして、この日もジタンは様子が変だった。
「なぁ、何か欲しいものとかないか?」
「何だい?藪から棒に」
「いいから答えろよ」
「そうだね・・・」
大きな瞳をさらに大きくしてまじまじと僕を見つめてくるジタン。
「ジタン」
「ん?」
「ジタンが欲しい」
「・・・・・・」
冗談めかして言ってやる。 こういうことを言うといつも真っ赤になって反応するジタン。だが、今回は何故か押し黙ったまま動こうとしない。 声をかけようとしたその矢先、なんとジタンは着ていたシャツのボタンを一つ一つ外し始めた。
「・・・・」
どこかたどたどしい手つきで上着を脱ぐと彼の白く温かみのある肌が露になった。珍しい光景に少し呆然としていた僕がようやく声をかけたのは、その手がベルトにかかった頃だった。
「ジタン・・?」
「・・んだよ」
「どう・・したんだい・・」
「どう・・って、お前が欲しいって言ったんだぜ」
「・・ああ・・・」
「だからくれてやる」
「・・・・・」
「いらないのかよ?」
・・・この問いに僕がどう答えたかは置いておこう。問題はジタンだ。
いつものように、リンドブルムへ行くというジタンに違和感を覚えた。 あの子が僕に隠していることがあるなら、恐らくこれしかない。 窓辺から小さくなるジタンの後姿を目で追うと、僕は頃合を見計らって外へ出た。
隠し事をするなとは言わない。
ただ、君の笑顔を曇らせるものの原因がそこにあるなら・・・何でもいいから僕に打ち明けてほしい。
残された時間、君とは笑って過ごしていたいから。