君だけの時間 |
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結) |
マーメイド |
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背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。 |
What's biting you? |
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クジャに噛み付いたジタンのお話。 |
カレバカリニトラワレテ
旅の支度をしてくると言って久しぶりに町に出た。
悟られないように深くフードを被って、喧騒の中を歩いていく。行き交う人たちの顔も町並みも、何もかも見慣れたもののはずなのに、今はどこかか見知らぬ場所のように思えた。
そうして買出しをすませると、偶然町に出てきていたミコトに会った。ミコトは唯一オレとクジャの消息を知っている人物でもあり、時折周囲の情報を伝えてくれていた。
「あなたの仲間が村に来たわ…」
「・・・・・」
「酷かもしれないけれど‥彼ばかりにとらわれていて‥いいの…?」
「もう少しだけ・・・」
「・・・」
「時間が欲しいんだ・・・」
それだけ答えると逃げるようにその場を立ち去った。
もう少ししたら・・
(もう少ししたら?どうだって言うんだ・・?)
旅に出るんだ・・クジャの延命方法を探して・・・
(見つかるわけない・・)
見つけてみせるさ
(あいつの言ったこと・・信じてるわけじゃないだろ?あんなの・・オレを安心させるための嘘だ)
あいつと一緒に、色んな所を旅して・・
(見たくないだけなんだ・・現実も、クジャの死も。だからあいつの優しさに便乗して・・逃げてる)
「おかえり、早かったね。」
「ん・・」
見慣れた笑顔にそっと胸を撫で下ろした。正直、どうやって帰ってきたのかはあまり覚えていない。 ただ脈絡なく沸き起こる雑念を振り払うように・・・必死に人の波をかき分けて・・気がついたらクジャの顔がそこにあった。
『彼ばかりにとらわれていていいの?』
ミコトにかけられた言葉が重くのしかかっていた。
わかってるんだ・・そんなこと。でも・・少し青ざめた顔でやさしく微笑むクジャを見て、なにもかも・・どうでもいいと、そう考える自分がどこかにいた。
クジャといるこの時間だけが、今のオレの全てだった。
錯覚でもよかった。
あいつの腕の中にいるこの瞬間だけは、時が止まったように思えたから。