NovelFF9

クジャ×ジタン

君だけの時間
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結)
マーメイド
背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。
What's biting you?
クジャに噛み付いたジタンのお話。

君だけの時間                           time6:Zidane

カレバカリニトラワレテ

旅の支度をしてくると言って久しぶりに町に出た。

悟られないように深くフードを被って、喧騒の中を歩いていく。行き交う人たちの顔も町並みも、何もかも見慣れたもののはずなのに、今はどこかか見知らぬ場所のように思えた。
そうして買出しをすませると、偶然町に出てきていたミコトに会った。ミコトは唯一オレとクジャの消息を知っている人物でもあり、時折周囲の情報を伝えてくれていた。

「あなたの仲間が村に来たわ…」
「・・・・・」
「酷かもしれないけれど‥彼ばかりにとらわれていて‥いいの…?」
「もう少しだけ・・・」
「・・・」
「時間が欲しいんだ・・・」

それだけ答えると逃げるようにその場を立ち去った。

もう少ししたら・・

(もう少ししたら?どうだって言うんだ・・?)

旅に出るんだ・・クジャの延命方法を探して・・・

(見つかるわけない・・)

見つけてみせるさ

(あいつの言ったこと・・信じてるわけじゃないだろ?あんなの・・オレを安心させるための嘘だ)

あいつと一緒に、色んな所を旅して・・

(見たくないだけなんだ・・現実も、クジャの死も。だからあいつの優しさに便乗して・・逃げてる)


「おかえり、早かったね。」
「ん・・」

見慣れた笑顔にそっと胸を撫で下ろした。正直、どうやって帰ってきたのかはあまり覚えていない。 ただ脈絡なく沸き起こる雑念を振り払うように・・・必死に人の波をかき分けて・・気がついたらクジャの顔がそこにあった。

『彼ばかりにとらわれていていいの?』
ミコトにかけられた言葉が重くのしかかっていた。

わかってるんだ・・そんなこと。でも・・少し青ざめた顔でやさしく微笑むクジャを見て、なにもかも・・どうでもいいと、そう考える自分がどこかにいた。

クジャといるこの時間だけが、今のオレの全てだった。

錯覚でもよかった。
あいつの腕の中にいるこの瞬間だけは、時が止まったように思えたから。

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2004.2.22 開設