NovelFF9

クジャ×ジタン

君だけの時間
1 2 3 4 5 6 7 8
ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結)
マーメイド
背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。
What's biting you?
クジャに噛み付いたジタンのお話。

君だけの時間                           time8:Zidane

君だけの時間

時が止まればいいと思っていた。

クジャといる時間は夢のようで、いつまでもこの腕の中にいたいと、オレを錯覚させる。けれど心のどこかで、そんな時間は長くは続かないとわかっていた。

少し長い夢を見ていただけなんだ・・タイムリミットを告げる鐘の音が鳴って、オレはあいつの腕をすり抜けて、もといた場所に戻る。ただそれだけのこと・・。

胸を躍らせ戻ったオレが見たのは、力なく横たわるクジャの姿だった。かろうじて息のあるあいつをベッドに運んで・・・一体どれくらい時間がたったんだろうか・・・。オレは死んだみたいに眠るクジャの傍らで、ただその彫刻のような寝顔を見つめていた。

「ジタン・・・」

ふと気付くと、目を覚ましたクジャがオレを心配そうに見ていた。

「・・・泣いているのかと・・思った・・」
「んなわけ・・ねーだろ・・・」

そう、今にも泣きそうな声で言った。

いい加減、強がるのを止めればいいのに・・やっぱりオレは・・素直じゃない。こんな風に意地を張っていつもお前を困らせて・・。でも・・・素直になれないのは・・お前のせいでもあるんだ。優しいお前は・・オレのどんな我侭も許すから・・。その手が差しのべられる度に、いつでもあるものだって思うようになっていった。失うことなんかないって・・。

でも違うんだよな。
わかってるつもりだったのに、一粒、二粒・・涙がこぼれていく。

「・・・ごめんね・・」

ひんやりとしたあいつの手が、その雫を拭った。

「・・いいんだ・・」

オレは涙を拭うこともせず、少し体温の低いその手を強く握り締めた。

とめどなく沸き起こる悲しみが暖かい夢の時間の終わりを告げる。今まで目を背けてきた現実とちゃんと向き合わなきゃいけない。オレには帰りを待つ人たちがいて、帰るべき場所がある。いつまでも夢の中にはいられない・・・いつかは覚める時が来るから。

・・・でも、その時が来るまで・・それまでは・・・

「ジタン・・・」
「ん・・」
「一眠りするから・・・・それまで・・側にいてくれるかい・・・?」
「・・いいぜ・・・」


クジャは日々衰えていく。

だからオレは、あとほんの少しだけ・・・彼だけの時間を過ごそうと思う。


Fin

TOP  BACK

2004.2.22 開設