NovelFF9

クジャ×ジタン

君だけの時間
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ED後、着実に迫るクジャの寿命を前に次第に自分 を見失い思い悩んでいくジタンと優しく支えようとす るクジャのお話。(完結)
マーメイド
背徳の宮殿にて。クジャへの思いに戸惑うジタン。
What's biting you?
クジャに噛み付いたジタンのお話。

君だけの時間                           time7:Kuja

砂時計が流れ落ちる、その瞬間まで

「よし、準備完了。いつでも出発できるぜ?」

そう言ってこちらを振り返り、万遍の笑みで微笑んで見せる。それはいつものジタンだった。本当は辛いはずの心を殺して・・僕の嘘に付き合ってくれている。

「それより、お前・・本当に体は大丈夫なのかよ?」
「ああ、今日は調子がいいんだ・・」
「ふぅん・・」
「・・?」
「ジタン?」

こつん・・と、まるで甘えるように僕の胸元に額を押しあててくる。

「・・あんま、無理すんなよな・・」
「・・あぁ」

そういえば、今までの時間を振り返る度に僕らは嘘ばかりついていた。ジタンは僕のことを思って。僕もジタンのことを思って。僕がいなくなったら・・君はどれだけ悲しんでくれるかな・・・なんて、時々考えていたって言ったら君は怒るだろうか。

君は素直じゃないから、僕の前では悲しい顔なんて少しも見せなかった。終始元気なフリをし続けて・・・僕はそれが少し悔しかった。本当は・・・弱い部分も全部さらけ出して欲しかった。

「なぁ・・クジャ・・」
「なんだい・・?」
「・・・オレ・・さ・・」
「?」
「・・・やっぱ、何でもない・・」
「そう・・」

けれど、素直じゃないのは・・僕も同じだった。

「おっと・・忘れ物しちまった・・ちょっと取りに行ってくる」

だから

「ジタン・・」
「ん?」

最期だけは素直になるよ。

「・・・ありがとう・・」
今まで側にいてくれて。

「なんだよ・・いきなり」
「別に・・ただ、ちょっと言ってみたかっただけ」

僕は君の人生の小さな汚点かな。

「ばーか」
「?」

ふいに触れるだけのキスをしてきたのはジタン。

「まってろよ」

耳元でそうつぶやくと、あの子は照れた様子で駆けていった。

その小さな後姿を見送った直後、張り詰めていた糸が切れるように・・・僕は自分の意識がどこかへ遠のいていくのを感じていた。

『ほら、何やってんだよクジャ。早く行こうぜ。』

いつもの笑顔で僕を呼ぶジタン。
堕ちていく意識の中で、僕はその姿をただ追いかけていた。

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2004.2.22 開設