Novel迷惑な隣人

教育実習生編

実習生が来た!
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実習生セルジュ・マツカを加えた4角関係(?)

お見合い編

キース先生の事情
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キース先生に振って湧いたお見合い話

完結編

さよならお隣さん
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キース先生に振って湧いた異動話

実習生が来た! -10-

駅前のファミリーレストランに入って数分。
特に会話もなくメニューと睨めっこをしていたセルジュをブルーは眺めていた。

「・・何ですか」
「明日で最初の一週間が終わるけど、実習の感想は?」
「・・・別に、普通です」
「そっか・・普通か」

彼らしいと言えば彼らしい返事に、ブルーはくすくすと笑った。

「・・僕、ちょっと今日のことでわかった気がする」
「何が・・ですか」
「君のこと」
「?」
「初日に、『実習には資格を取るために来た』って言ってたけど・・・あれ、嘘だよね」
「・・」
「僕は教育大学だったから、そんなに詳しくはないけれど・・一般の大学で教員免許を取るにはすごく沢山授業を取らなければならないんだよね。君みたいな一流大学の学生が、そんな面倒なことをする意味はあるのかなーって思ったんだけど」
「何が言いたいんですか」
「・・変に格好つけないで、ありのままの自分を出したらいいのに」

どうやら図星だったのか、セルジュはばつの悪そうな顔でメニューをたたむと、もじもじと反論してきた。

「別に・・格好つけてなんかないですけど・・ただ・・」
「ただ?」
「・・苦手なんです・・そういうの、素直に言葉にするの。・・なんていうか・・ついつい逆のこと言ってしまうっていうか・・・て、何笑ってるんですか?」

いつの間にか肩を震わせて笑っているブルーに、セルジュが怪訝な顔をする。

「いや・・ごめん。なんだか可愛いなぁと思って・・」
「は?」
「成程、君は相当な天の邪鬼だったというわけか」

冷めた表情で生意気に意見したかと思えば、先程のように無謀とも言える行動に出たりもする。そのギャップに、ブルーはセルジュの本当の人となりがようやくわかった気がした。斜に構えて自分の良さを隠してしまっているが、本当は優しく思いやりのある青年。

「君ならきっと、いい先生になれると思うよ」
「・・・どうも」

すっかり年相応に初な青年の顔をしたセルジュに、ブルーはまるで弟分ができたような気がして嬉しくなった。

「それよりセルジュ、何食べる?とりあえずビール頼もうか」
「え?俺バイクなんすけど・・」
「あ、そっか・・ゴメン、そうだったよね」

なんだかこんな風にセルジュと仲良くしていると、ついついあの二人のことを思い出してしまう。可愛い弟分・・後輩・・キースにとってマツカはどんな存在なのだろう。
僕がセルジュに抱く感情と同じ・・?それとも違うのかな・・?

「ブルー先生、」
「え・・?」
「どうしたんですか、ボーっとして」
「え・・ううん、な・・なんでもない。そっか、バイクあるんだったよね。それに明日も早いしね」

再び蘇った教室での光景を振り払うように、しらじらしくメニューを広げたブルー。

「・・・なんか、嫌なことでもあったんですか?」
「え?」
「ホント、わかりやすいですよね・・ブルー先生って」
「・・・そうかな」

「・・じゃあ、俺もビールお願いします」
「?」
「よくわかんないですけど・・・しょうがないから、付き合ってあげますよ」



一方その頃、校舎ではキースとマツカが来週に控えた研究授業のための特訓をしていた。

「ど・・どうでしたか?」

生徒代理として机にかけるキースに、マツカは恐る恐る授業の出来を聞いた。

「まあ、そう悪くはなかったな」
「・・・はぁ~・・・・」
「勘違いするな。前回より多少マシになったというだけのことだ」
「は・・はい」
「声がまだ小さい。どんなに授業の内容がよくとも、聞き取れなければ全く意味がない。最低限、一番後ろの席の生徒が意識せずとも聞こえる声量で授業をしろ」
「・・はい」

キースの厳しい叱責に、若干意気消沈気味に教壇から下りるマツカ。
久しぶりの再会で甘い顔をしていたが、基本的に大学の頃からマツカに対しては当たりの強いキースであった。勿論、それもこれも全ては可愛い後輩のために他ならないが。

「それより、目はもう大丈夫か?」
「あ、はい。もうなんともないです」
「・・そうか、さっきはすまなかったな」
「いえ、気にしないでください」

それはほんの小一時間前の出来事だった。
授業の途中で見るに見かねたキースが板書の書き方を指南しようと黒板を消したところ、チョークの粉が思い切りマツカの目に入ってしまったのだった。
直後は痛みを訴えていたマツカだったが、なんとか涙でチョークは流れたようだ。

「先輩、今日はありがとうございました」
「随分遅くなってしまったな。帰り道、気をつけろよ」
「はい、お疲れ様です」

鞄を背負って教室を出ていくマツカを見送ると、キースもまた職員室へと戻って行った。
残業をする教員たちの中にブルーの姿がないことを意外に思いながら、キースは残りの仕事を片付けにかかった。

(あいつ・・昨日は相当参っているようだったが、あの実習生とは上手くやっていけただろうか)
朝礼の際に多少話をしていた様子だったため、大して気にはしていなかったが、ああ見えてブルーが思いつめるタイプだとキースはよく知っている。

それにここのところどうも様子がおかしい時がある。
てっきり今日も一緒に帰れるかと思っていたが、何かあったのだろうか・・?

キースは空の席をしばらく見つめると、再び自分の仕事へと戻った。

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2004.2.22 開設