実習生が来た! |
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実習生セルジュ・マツカを加えた4角関係(?) |
キース先生の事情 |
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キース先生に振って湧いたお見合い話 |
さよならお隣さん |
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キース先生に振って湧いた異動話 |
「え・・・」
突然現れた男に、セルジュは状況が把握できなかった。
向こうも同じなのか、かなり驚いた様子で眠っているブルー先生の顔とこちらを交互に見ていたが、すぐさま突き刺すような視線で睨みつけてきた。
「貴様・・・人の部屋で一体何をしている・・?」
「・・?・・」
人の部屋・・?
一体この男は何を言っているのだろう。
というか、そもそもお前は誰だ?
あからさまに敵意と不愉快を顔に出している男。
反射的に顔をしかめたセルジュだったが、男の言葉の意図するところがわからず、とりあえず問い返してみた。
「人の部屋って・・・ここはブルー先生の部屋じゃ・・」
「ここは俺の部屋だ!」
「ええええ!?」
その瞬間、セルジュは自分が置かれている状況をようやく理解した。
そして目の前の男が誰なのかということも・・。
見ず知らずの男とばかり思っていたが、そういえば彼の顔は職員室で何度も見ていた。ブルー先生の隣の席の国語科の教師・・確か名前はキース。
自分が今いるのはブルー先生の部屋ではなく、そのキース先生の部屋ということらしい。
では何故、ブルー先生の鞄の中にこの部屋の鍵が入っていたのか・・・。
勘のいいセルジュには、深く考えるまでもない簡単な問題だった。
「・・じゃあ・・ブルー先生の恋人って・・」
「だったら何だ・・?」
アイスブルーの瞳がまるで害虫を見るかのように、冷ややかにこちらを見ている。
セルジュは未だかつて感じたことのない圧迫感に、思わず固まってしまった。
蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのことを言うのだろう。
脳裏には、浮気をした『恋人』を挑発してみようか・・・などという発想が浮かんでいたのだが、向けられた強烈な敵意に、そんな余裕など全くなくなってしまった。
・・・・怖い。
な・・なんか・・・めちゃくちゃ怖い・・この人。
「俺に何か用か?」
「・・い・・いえ・・」
恐怖を通り越して、苦笑いさえ浮かべてしまう。
うっかり蜂の巣をつついてしまった気分だった。
「・・そうか」
「・・・」
「なら、行け・・」
「え・・?」
「とっと出て行け!!」
「は、はいいっ!!」
セルジュはばたばたと寝室を飛び出すと、とるものもとりあえず玄関へと退散した。
脱ぎ捨てていた靴を慌てて履こうとするも、上手く足が入らない。もたつきながらも、とにかく早く立ち去ろうと扉を開けた時だった。
「・・ちょっと待て、実習生」
「は・・はい!」
「忘れ物だ」
「・・?」
振り返った瞬間、左頬に強烈な衝撃を覚えた。
と同時に、どさりと鈍い音とともにセルジュの体は玄関前に殴り飛ばされた。
「これに懲りたら、人のものに手を出さないことだ」
「・・・・・」
何が起こったのかわからず、セルジュは頬の痛みにただ呆然とした。
はいと返事をする前に、玄関のドアは堅く閉ざされたのだった。