実習生が来た! |
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実習生セルジュ・マツカを加えた4角関係(?) |
キース先生の事情 |
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キース先生に振って湧いたお見合い話 |
さよならお隣さん |
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キース先生に振って湧いた異動話 |
結局二週間が経っても、セルジュ=スタージョンからの連絡はこなかった。
ブルーは幾度か連絡を試みたが、何れも留守番電話にメッセージを残すのみにとどまり、打ち合わせを一切しないまま教育実習初日を迎えてしまったのだった。
「よっ、よろしくお願いしますっ」
「まあ、そう気負うな」
「でも・・ほんとに・・先輩と一緒の学校で実習できるなんて・・夢みたいです」
「大げさな奴だな」
セルジュのために用意していた教材を見つめながら溜息をついていると、隣ではキースがマツカを笑顔で迎えていた。
あんな優しい顔、僕にも見せたことないんじゃないか。
小動物とその飼い主のように見えなくもないが、自分以外の人間に笑顔を向けるキース・・というのが、どうにも見ていて落ち着かない。
遠巻きに二人のやりとりを見ていたブルーが、再び胃のむかつきを覚えた時だった。
「あのー、」
「・・」
「あの」
「なに?」
「ブルー先生・・ですよね」
「そうだけど、君は?」
「ノア大学から理科の実習に来ました、セルジュ=スタージョンです」
ブルーを見下ろすかのように、癖のある髪に浅黒の肌を持つ青年がすぐ傍に立っていた。
電話口に聞いた声と同じ、ふてぶてしいほどの態度で。
「君が・・・」
連絡がいっこうにないため、当日も来ないのではないかと錯覚したほどだったが・・・。
そうか、来たのか・・と呆れ半分、怒り半分で、ブルーはちくりと最初に苦言を呈した。
「幾度か君の携帯にメッセージを残したけど・・伝わっていなかったみたいだね」
「あーすいません、すっかり忘れてて。でもまあ、範囲は事前に伺っているので、実習をする上でさほど支障はないんじゃないですか」
・・なんだこの子は!?
約束を破っておいて、謝罪の言葉もないのか・・!
寛容なブルーも流石に黙ってはいられなかった。
「打ち合わせの段階からそんないい加減なことでどうするんだい。そんなことでは、ちゃんとした教師になれないよ」
「俺、別に教師になるつもりはないんで」
「?では何故ここに来たんだい」
「まあ、一応・・大学で取れる資格はとっておこうと思っただけっていうか」
なんなんだ、この子は・・!?
内容的には先日のマツカと似たようなことを言っているはずなのだが、何故こんなに小憎たらしい言い方ができるのだろうか。あまりに横柄な態度にブルーは怒りを通り越して驚きを覚えた。
もっとちゃんとした敬語を使いたまえ!と・・言いたくなったが、注意するのもばからしいような気がして、ブルーは最低限のルールだけを告げた。
「・・そうなんだ。でもそれ、生徒には言わないようにね。夢壊しちゃうから」
「ふーん・・でも実習生の大半がそうですよ」
「だとしても、言わないように。先生にならないのに教育実習に来たんですか?ってことになっちゃうだろ」
「なら教師になるつもりないのに、なるって言わなきゃいけないんですか?それはそれで、生徒に嘘つくことになりません?」
「・・・・・」
よくわかった。
僕は彼とは馬が合わない。
ブルーの教育実習初日は、こうして幕を開けたのだった。