Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

鉄仮面の失敗 -2-

硬直のあと、最初に口を開いたのはブルーだった。

「男女の識別もできないとは・・・・メンバーズとは、随分うぶなのだな」
「貴様が誤解を招く体格をしているのが悪い。ミュウは身体的に虚弱だとは聞いていたが・・・女とまるで変わらないとは笑わせる」
「それは申し訳ないことをした」

言葉の針を投げるが、激しく言い争うことはしない。相手を喜ばせるだけだと互いにわかっていた。 メンバーズエリートの思わぬ失態を鼻で笑うブルーに、キースはすかさず懐の銃を突きつけた。

「妙な真似をするなよ、オリジン」

心への進入を許した恐怖がまだ残っている。
余裕の笑みを浮かべたキースは、その態度とは裏腹に冷や汗をかいていた。 こんなものを突きつけても、何の役にも立たないのではないか。 あの伝説のタイプブルーオリジンが目の前にいる。
しかし、帰ってきたのは予想外の反応だった。

「安心したまえ。今の私に、君と真正面から交戦する力はない。・・・寝起きでね」
「・・・?」

それまでの挑発するような笑みとは違い、蕾が開くようにふわりと浮かんだそれに、逆にキースから笑みが消えた。 心を刺すような小さな痛みと、いつぞやのシグナルが鳴っては消えた。 気づかない振りをして銃を握る右手に力を込めたが、現にブルーは抵抗する様子も、サイオン能力を使うそぶりも見せなかった。

否、正確にはどちらもできなかった。

目覚めたばかりの体は引きずればなんとか動いたが、サイオン能力はそう易々と眠りから覚めてはくれない。 フィシスにすら止められた辛うじて放った一撃、あれが今のブルーの精一杯。 もはや思念を感じることも、それを使って離れた仲間と意思疎通を図ることもできない。

万事休すと言えばそうだが、本来この場にいたはずのフィシスを思えば、ブルーにとってこの状況はむしろ好都合だった。


そんなこととは露知らず、キースは不可解な笑みを浮かべるブルーから目を逸らした。

甘い果実を思わせるその瞳。掴もうと手を伸ばせば、逆にこちらが食われてしまいそうだ。 何故かそう、漠然と思った。

逃走のための人質―にしては危険な相手に思われたが、手段を選んでいる場合ではなかった。

「まあいい、退路確保の保険は貴様に担ってもらうことにする」

再び薄く笑みを浮かべたキースは、押し付けるようにブルーのすぐ横の壁に手をついた。 その動きに抵抗の気配はない。 ただ、長い睫毛に縁取られた瞼が一瞬、鮮やかな紅の瞳を覆い隠した。 再び姿を現した二つの宝石が上目遣いにキースを捕らえると、 その持ち主は意外な言葉を発した。

「そうか。しかし・・敵地から奪った船が、思い通りに動いてくれると思っているのなら、考えを改めるべきだな」
「何?」

反射的に、操縦席のモニターを振り返る。
自動操縦は正確に作動し、予め設定した首都星への航路にも寸分の狂いがない。 しかし、キースはある一角で赤く点滅するエラーメッセージを発見した。

「エネルギータンク・・・?」

表示された数値の変動が、異常に早い。燃料がどんどん減っているのだ。

「何をした?!」
「格納庫で君を待つ間、燃料タンクに穴を開けておいた」
「・・・!」
「君はこの星系から出られもせず、宇宙の漂流者になるというわけだ」
「・・・貴様・・・!はなからそれが狙いだったというわけか・・」

それは万一船を奪取された際、僅かな足止めになればと思いやったことだった。 しかしまさか、自分も同船することになるとは思ってもいなかったブルー。
サイオン能力が戻りさえすれば彼自身脱出はたやすい。
だが、ここまで弱りきった自身のサイオンが、どれだけ待てばテレポートが出来る程に回復するのか・・・ 今のブルーにはその予測も立てられず、確信もなかった。

心中する気まではなかったのだが・・・そう思いながら、ブルーは仲間を、そして彼らの安住の地になりつつあるあの赤い星を想った。 自分たちの情報を知りすぎたこの男を、そのまま帰してしまうよりは・・・まだいい。

先程までの彼の不可解な笑みの理由にようやく気づいたキースは、軽く舌打ちをした。

どうする。

この燃料の減りでは、奴の言う通り、ジルベスター星系から抜け出る前に燃料切れを起こす。 調査の発端となった遭難事件の多発から、まずこの航路を通常の船は走行しない。
さらに自分がここまでの足に使った調査船は意図せず引き上げた。それはつまり、この星域における軍の調査の完全な打ち切りを意味していた。 これでは、通信機器を使って近隣の戦艦に呼びかけることも適わない。

念のため、通信回線を開いたが、やはりミュウ独自の改造が施してあるようで、ユニバーサルとの通信回路などは存在していなかった。

次第に焦りの色を隠せなくなったキースに、ブルーの口角が小さく上がった。それを認め、キースはモニターに向かっていた体を元へ戻した。 そして銃を突きつけた右腕はそのままに、もう片方で彼の肩を掴んで強く背面に叩きつけたのだった。

「やってくれるな・・・・!」
「!・・っ・・・・・・・・」

痛みに顔を歪めたのは一瞬のこと。
再び不敵な笑みを浮かべたブルーに、その顔をやめろ、と怒鳴りつけるキース。 彼の左手が再びブルーの口元を捕まえ、顎を強く引き上げた。

強く絡み合う視線。

キースは息を飲んだ。

怒りも、挑発もない。ただ真っ直ぐに自分を見る紅い瞳がそこにあった。

不思議な男だ。

ミュウが・・・いや、人類全てが求めてやまないあの星の色と同じ名で、そのくせそれとは対照的な瞳を持っている。

清流の穏やかさを彷彿とさせるのに、触れるものを焼き尽くすような激しさをも秘めている。


きれいだ。


ごく自然に。そんな想いがキースの胸に浮かんだ。

そうして、引き込まれるままに禁断の赤い果実に手を伸ばした。
その時だった。

「ブルー!!無事?!」

「・・・?!・・・・貴様・・・!」
「・・ジョミー・・・!」

突如船内に現れた少年に、キースは眉を寄せ、目を見開いた。 一方のブルーは、同様に驚きながらも、久しく呼んでいない少年の名を口にしたのだった。

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2004.2.22 開設