Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
硬直のあと、最初に口を開いたのはブルーだった。
「男女の識別もできないとは・・・・メンバーズとは、随分うぶなのだな」
「貴様が誤解を招く体格をしているのが悪い。ミュウは身体的に虚弱だとは聞いていたが・・・女とまるで変わらないとは笑わせる」
「それは申し訳ないことをした」
言葉の針を投げるが、激しく言い争うことはしない。相手を喜ばせるだけだと互いにわかっていた。 メンバーズエリートの思わぬ失態を鼻で笑うブルーに、キースはすかさず懐の銃を突きつけた。
「妙な真似をするなよ、オリジン」
心への進入を許した恐怖がまだ残っている。
余裕の笑みを浮かべたキースは、その態度とは裏腹に冷や汗をかいていた。
こんなものを突きつけても、何の役にも立たないのではないか。
あの伝説のタイプブルーオリジンが目の前にいる。
しかし、帰ってきたのは予想外の反応だった。
「安心したまえ。今の私に、君と真正面から交戦する力はない。・・・寝起きでね」
「・・・?」
それまでの挑発するような笑みとは違い、蕾が開くようにふわりと浮かんだそれに、逆にキースから笑みが消えた。 心を刺すような小さな痛みと、いつぞやのシグナルが鳴っては消えた。 気づかない振りをして銃を握る右手に力を込めたが、現にブルーは抵抗する様子も、サイオン能力を使うそぶりも見せなかった。
否、正確にはどちらもできなかった。
目覚めたばかりの体は引きずればなんとか動いたが、サイオン能力はそう易々と眠りから覚めてはくれない。 フィシスにすら止められた辛うじて放った一撃、あれが今のブルーの精一杯。 もはや思念を感じることも、それを使って離れた仲間と意思疎通を図ることもできない。
万事休すと言えばそうだが、本来この場にいたはずのフィシスを思えば、ブルーにとってこの状況はむしろ好都合だった。
そんなこととは露知らず、キースは不可解な笑みを浮かべるブルーから目を逸らした。
甘い果実を思わせるその瞳。掴もうと手を伸ばせば、逆にこちらが食われてしまいそうだ。 何故かそう、漠然と思った。
逃走のための人質―にしては危険な相手に思われたが、手段を選んでいる場合ではなかった。
「まあいい、退路確保の保険は貴様に担ってもらうことにする」
再び薄く笑みを浮かべたキースは、押し付けるようにブルーのすぐ横の壁に手をついた。 その動きに抵抗の気配はない。 ただ、長い睫毛に縁取られた瞼が一瞬、鮮やかな紅の瞳を覆い隠した。 再び姿を現した二つの宝石が上目遣いにキースを捕らえると、 その持ち主は意外な言葉を発した。
「そうか。しかし・・敵地から奪った船が、思い通りに動いてくれると思っているのなら、考えを改めるべきだな」
「何?」
反射的に、操縦席のモニターを振り返る。
自動操縦は正確に作動し、予め設定した首都星への航路にも寸分の狂いがない。
しかし、キースはある一角で赤く点滅するエラーメッセージを発見した。
「エネルギータンク・・・?」
表示された数値の変動が、異常に早い。燃料がどんどん減っているのだ。
「何をした?!」
「格納庫で君を待つ間、燃料タンクに穴を開けておいた」
「・・・!」
「君はこの星系から出られもせず、宇宙の漂流者になるというわけだ」
「・・・貴様・・・!はなからそれが狙いだったというわけか・・」
それは万一船を奪取された際、僅かな足止めになればと思いやったことだった。
しかしまさか、自分も同船することになるとは思ってもいなかったブルー。
サイオン能力が戻りさえすれば彼自身脱出はたやすい。
だが、ここまで弱りきった自身のサイオンが、どれだけ待てばテレポートが出来る程に回復するのか・・・
今のブルーにはその予測も立てられず、確信もなかった。
心中する気まではなかったのだが・・・そう思いながら、ブルーは仲間を、そして彼らの安住の地になりつつあるあの赤い星を想った。 自分たちの情報を知りすぎたこの男を、そのまま帰してしまうよりは・・・まだいい。
先程までの彼の不可解な笑みの理由にようやく気づいたキースは、軽く舌打ちをした。
どうする。
この燃料の減りでは、奴の言う通り、ジルベスター星系から抜け出る前に燃料切れを起こす。
調査の発端となった遭難事件の多発から、まずこの航路を通常の船は走行しない。
さらに自分がここまでの足に使った調査船は意図せず引き上げた。それはつまり、この星域における軍の調査の完全な打ち切りを意味していた。
これでは、通信機器を使って近隣の戦艦に呼びかけることも適わない。
念のため、通信回線を開いたが、やはりミュウ独自の改造が施してあるようで、ユニバーサルとの通信回路などは存在していなかった。
次第に焦りの色を隠せなくなったキースに、ブルーの口角が小さく上がった。それを認め、キースはモニターに向かっていた体を元へ戻した。 そして銃を突きつけた右腕はそのままに、もう片方で彼の肩を掴んで強く背面に叩きつけたのだった。
「やってくれるな・・・・!」
「!・・っ・・・・・・・・」
痛みに顔を歪めたのは一瞬のこと。
再び不敵な笑みを浮かべたブルーに、その顔をやめろ、と怒鳴りつけるキース。
彼の左手が再びブルーの口元を捕まえ、顎を強く引き上げた。
強く絡み合う視線。
キースは息を飲んだ。
怒りも、挑発もない。ただ真っ直ぐに自分を見る紅い瞳がそこにあった。
不思議な男だ。
ミュウが・・・いや、人類全てが求めてやまないあの星の色と同じ名で、そのくせそれとは対照的な瞳を持っている。
清流の穏やかさを彷彿とさせるのに、触れるものを焼き尽くすような激しさをも秘めている。
きれいだ。
ごく自然に。そんな想いがキースの胸に浮かんだ。
そうして、引き込まれるままに禁断の赤い果実に手を伸ばした。
その時だった。
「ブルー!!無事?!」
「・・・?!・・・・貴様・・・!」
「・・ジョミー・・・!」
突如船内に現れた少年に、キースは眉を寄せ、目を見開いた。 一方のブルーは、同様に驚きながらも、久しく呼んでいない少年の名を口にしたのだった。