Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
最初に断っておくけど、あの人の第一印象は、あんまりよくなかった。
「ジョミー・・・また・・君に会えるなんて・・」
「?・・僕、会長とどこかでお会いしましたっけ?あ、入学式かな」
『がっかりした』
あの時はっきりと顔にそう書いたブルーを、僕は今でも忘れない。
あの顔を思い出すたびに、少し前まではやっぱり自分の事を告げるべきなのかなと思ったりもしたけど、今はそんな心配の必要もなくなった。
ブルーはちゃんと前を向いている。
そうさせたのは僕・・・・ではないのが、ちょっぴり悔しいところだったりもする。
今から1年前、僕はこのシャングリラ学園に入学した。
入学早々、あみだの末に決まった委員会で、僕は一番厄介な生徒会の補佐をする委員になってしまった。呼び出しは頻繁で、任期は1年もある。
やってられないと思いながら初めて出向いた生徒会室で、初対面の生徒会長にあからさまに『ががっかりだ』という顔をされた。それがブルーとの出会いだった。
とても綺麗な人だと思ったけど、漠然と自分の何かが彼の期待に添えないのだと思うと何故かショックを受けた。
その時のブルーの言葉、ブルーの気持ち・・僕が理解するのは、それからもうしばらく経ってからだ。
『起きなさい、ジョミー』
『ジョミー』
「ん・・・・マム・・もうちょっと・・」
「僕は君のマムじゃない」
「!うわあああああっ!」
耳元で響いたテノールに、ジョミーまさに文字通り飛び起きた。
「なな・・な・・なに?!」
「初仕事の日に寮に帰って昼寝とはいい度胸だな、ジョミー=マーキス=シン」
「せ・・生徒会長・・」
ベッドの上で、壁を背に腰を抜かしたジョミーを、冷やかに赤い瞳が見下ろしていた。
くじ引きで決まった生徒会執行委員。
今日の放課後はその初仕事の日だった。
当初顔を出していたものの、荷物運びという億劫な仕事内容に、ジョミーは早々に場を抜け出した。寮に戻って自室のベッドでくつろいでいたはずが、いつの間にか寝入ってしまった。そうして今に至る。
目が覚めたら目の前に生徒会長がいた。というより、彼に起こされた。
「あ・・あの・・どうやって入ったんですか・・?」
「寮長に鍵を借りたんだ。寝こけた執行委員を連れ戻すのも僕の大事な職務だからね。快く貸してくれたよ」
「・・はあ」
「何か言うことは?」
「・・す・・すいませんでした」
よろしい、と微笑むと、生徒会長はジョミーに手を差し伸べた。
「自分で・・起きれます」
「・・そう」
ジョミーは差し出された手を取らなかった。
僅かに会長の顔が曇ったことにチクリと胸が痛んだ。
「いいですよ、ついてこなくて。もう逃げたりしませんから」
「僕もこっちに用があるんだよ」
学生寮から校庭への道のりが、いつにも増して長く感じる。 左隣りを歩く会長に、ジョミーはぶっきらぼうに答えた。
「だったら・・いいですけど」
左半身が異様に緊張している。
その時、くすりと会長が笑った。
自分を見て笑ったように思えて、ジョミーはつい棘のある言い方をしてしまう。
「僕、そんなにおかしいですか?」
「・・いや。ずいぶん、嫌われたものだなと思ってね」
嫌い?僕がこの人を?
ううん。そういうんじゃ、なくって。
「・・僕は別に・・」
「?」
「会長のこと、嫌いってわけじゃ・・ないですよ。ただなんとなく、苦手っていうか」
苦手・・?それも違う気がする。
「それを嫌いと言うんだよ」
「ち・・違います!言いません」
「・・?」
僕は・・。
「・・なんて・・言うか・・。会長は2年だし・・この学校の生徒会長だし。僕は1年で、生徒会の下っ端で・・つまりは会長は僕の上司みたいなものじゃないですか。だから・・普通、そういう立場の人が傍にいて・・その・・緊張しないわけがないっていうか・・友達みたいに馴れ馴れしくできないっていうか・・だから会長のことが嫌いってわけじゃ・・ないんです。絶対・・」
漫然と並べた理由は、正しく思えるようでそのどれもが違う気がした。
何か違うと思いながらも、ジョミーはこれ以上会長の顔が曇らないように必死になっていた。
僕は多分・・・この人の期待に答えられないのが嫌なんだ。
『がっかりした』って顔。されたことよりも、させてしまったことのほうが何故かすごく嫌だった。
「・・じゃあ、友達になろう」
「は?」
「僕のことはブルーでいいよ」
差し出された右手を、ジョミーはあっけにとられながら見つめた。
嫌いじゃない。
そんなジョミーの言葉が嬉しかったのか、会長は年齢よりも随分幼い笑顔を浮かべていた。
何がそんなに嬉しいんだろう?
何がそんなに悲しかったの?
ジョミーは左手をズボンの裾で慌てて拭くと、躊躇いながらも前に出した。
強引なところは相変わらずだな。
彼のことなんて何一つ知りもしないはずなのに、心の奥にそう呟く自分がいた。