Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
やばい・・お・・怒られる・・!
硬直したセルジュをよそに、キースは表情を変えないままこちらをじっと見つめていた。
本来なら今日は会議のためにノアに足を運んでいるはずだが、どうやらスケジュールが前倒しになったようだ。
果たして、怒られるだけで済むだろうか・・?いや、済まない。
大佐のこの表情から(と言っても無表情で普段とあんまり変わらない気がしなくもないが)、なんというか・・いつにもまして怒りを感じる気がする。
それもそうだ。上官の個人的な秘密を暴いてしまった上に、土足でそこに立ち言ってしまったのだ。
キースには訓練生時代から目をかけてもらっていたセルジュだったが、流石に自分の出世街道はここで閉ざされたと確信した。
「え・・ええと、その」
回らない頭の中で最善の言い訳を考えるも、言い訳はおろか言葉すら出てこない。そもそも恐怖が大きすぎて、セルジュはキースの目が直視できなかった。
だが俯いたまま固まっていると、思いもよらない所から助け船が出された。
「僕がマツカにお願いしたんだよ」
「?」
「マツカの忙しい時、お喋りのできる相手がほしいってね」
ベッドの上の怪我人はセルジュのほうに視線をはずし微笑むと、すぐにキースへと向き直った。
セルジュはただ呆然と彼を見つめるしかなかった。
何故彼が庇ってくれているのか・・・とか、なんて下手くそな嘘をつくのだこいつは・・とか・・・色んな想いがごちゃまぜになっていた。
ただ、こんな見え透いた嘘をキースがどう受け取るのかが気になった。
一方のキースといえば、怪我人のほうをじっと見つめていた。
余裕に満ちた笑みを浮かべた彼、そして彼をとらえるキースの鋭い瞳。
大佐に睨まれてよくもまあそんな余裕の表情ができるものだ・・とセルジュは別の意味で感心してしまった。そして同時に思った。
この艦における異質な存在は確かに目の前のオリジンだ。
だが今この瞬間に限っては、自分こそ違いな場所にいるのではないか・・と。
そう思わせる雰囲気が、二人にはあった。
「捕虜にしては出過ぎた真似をしたかい?」
沈黙を破り、オリジンが皮肉交じりに微笑んだ。
視線の先のキースが僅かに目を細めたのが、セルジュにもわかった。
またしばしの沈黙が流れようとした時だった。
「下がっていいぞ、セルジュ」
それまでじっとオリジンを見つめていたキースがセルジュを一瞥した。
「は・・・・はい」
セルジュはなんとか声を絞り出すと、逃げるように部屋を後にした。
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「それ、あいつのか?」
「はい」
数日後、通路ですれ違ったマツカがいつものようにこっそり彼に食事を届けようとしていた。
「あ、あのさ・・・大佐、俺のこと何か言ってたか・・?」
「いえ、何も・・?・・何かあったんですか?」
マツカのくせに妙な質返しをしてくるな!と腹の中で思いながらも、セルジュは何もないと素気なく返した。
あの日から、セルジュは普段と変わらぬ日々を過ごしている。
幸いなことに、降格や左遷の知らせはまだ来ない。それどころか、後々あるだろうと身構えていたキースからの呼び出しもない。
ブリッジで会っても、執務室で報告をしていても、大佐は何も俺に言わない。
それは信頼なのだろうか、それとも無言の圧力なのだろうか・・答えは今のところわからない。
ただ一つはっきりとわかっていることは、あの部屋には自分は二度と立ち入らない方がいい、ということだった。
「・・・そうは言ってもなぁ・・」
オリジンを匿うキースの真意は結局わからないままだ。
下世話な推測は立つものの、あの二人を目の当たりにすると、その一言で片づけるのは何か少し違う・・繋がりのようなものを感じた気がしたのだ。
大佐はいつまで彼を傍に置いておくのだろう。
いつまで彼を隠しているのだろう。
隠し通すことができるのだろうか。
(違う・・・これは俺がする心配じゃない。俺は何も見てないし、何も聞いてない)
自分の思考に大きく被りを振ると、セルジュはブリッジへと戻っていく。
為すべき仕事は山ほどある。見なくともよいものを見て、抱えなくてもいい荷物を抱える・・そんな時間などないのだ。
けれどそう考えて納得する程、まだまだ自分は従順な駒ではない。
多分大佐も・・・そうなのだ。
その事実が意外でもあり、何故か嬉しくもあるセルジュだった。
Fin