Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

Memory of a pain -10-

艶を帯びた赤い瞳がキースを見つめていた。

燻り続けていた熱を煽られるような感覚に、キースは抗うことなど考えもしなかった。
何もかもどうでもよかった。
ただ夢中で唇を重ね、押し倒した。 それがブルーからの問いに対するキースの答えだった。

野蛮ともとれる口づけを交わし合い、ブルーの肌に初めて触れた。 湿った髪が纏わりついても構わなかった。

ブルーが欲しい。
彼とより深く繋がり合いたい。
その想いの先に何があるのか、自分たちの関係がこれからどう変化するのか・・キースにはわからなかった。何も変わらないかもしれないし、変わるのならそれもいいと思った。

キースの熱がブルーを貫く。
熱の籠った戸息を吐いて、ブルーがキースと名を呼んだ。
ブルーもまた自分を欲してくれている。
満たされた想いとともに、このまま溶けあえたならばどんなにいいだろうと、キースは甘い夢の中に堕ちていった。



コツン、コツン。
足音が聞こえる。
硬質な床を歩く音が近づいてくる。
キースは重たい瞼を持ち上げると、ゆるりと立ち上がった。 周囲を見回すと、ころころと足元にサッカーボールが転がってきた。

「ノアのグラウンドはここより広い?」

金色の少年は笑みを浮かべて消えてしまった。

「キース」
「キース、」

落ち着いた男女の声に振り返ると、ノアで暮らしているキースの両親がそこにいた。
「地球の学校へ?お前の好きにするといい」
「気をつけて行ってらっしゃい」
微笑む父と、ほんの少し寂しげな母の姿もすぐに消えた。

コツン、コツン。
まだ足音は途絶えない。
より大きくなるその音の在りかを探そうとあたりを見回したキースの瞳に、ブルーの姿が映った。

「僕も・・君と仲良くなりたいな」

「だって君は・・」

それまで笑みを浮かべていたブルーが、キースを冷ややかに見つめた。

「君は僕に何をしたと思う?」


耳元まできていた足音がぴたりと止まった。 次の瞬間、キースは見慣れた場所に立っていた。 嫌と言うほど繰り返し見てきた光景が脳裡によぎる。 機械に囲まれた硬質な空間には見覚えがあった。

ここは夢の世界。
そして恐らく、過去の世界。

またあの男を殺す夢を見る。
キースは身構えながらも、早く終わってしまえばいいと目の前に移る光景をぼんやりと眺めていた。
しかしそれは、傍観者のように見つめていた時とは違った。
今もキースは見ているだけだ。確かにそれは変わらない。だが、その視点はもう一人のキースを映さない。 キースの瞳は、目の前に佇む血塗れの男だけをとらえていた。

何かがおかしい。

コツン、コツン。
視点が近づくたびに足音が響く。

「亀のように這いつくばっているだけでは、メギドは止められんぞ」

嘲笑すら含んだ口調で、男に銃を向けた。
これまで見た夢とは違い、途切れ途切れだった言葉の全てが今は明瞭に聞こえる。

握りしめた銃の固く冷たい感触。 引き金を引こうとする指に込めた力。

違う・・。
これは夢じゃない。
遠い過去でもない。
現実だ。
現実に・・・起こったことだ。

そこで初めて、キースは自分が男に銃を向けているのだとわかった。

俯いたままだった男が顔をあげる。
固い意志を秘めた赤い瞳と目があった。

ブルーだった。


キースはやめろと叫んだ。けれどキースは引き金を引いた。
何度も、何度も。
その手で引き金を引いた。

(覚えてる・・)


最後の一発が、ブルーをとらえた。銃弾はブルーの右目に吸い込まれた。

(そうだ・・)

(俺が撃った)


(俺が、殺した)




「っ・・はぁ・・はぁ・・っ・・」

雨音が聞こえる。
静寂の中、夢から覚めたキースは乱れた息を整えた。 噴き出した汗が急速に体を冷やしていく。 自室のベッドの上に、彼はいた。

ふと隣を見れば、自分に寄り添うように眠るブルーの姿があった。

「・・っ・・」

足場など最初からなかった。
自分はずっと奈落にいたのに。気付かずにのうのうと、今まで生きていた。

「・・俺は・・・・」

震える両手を目の前で広げた。
見つめた掌が、酷く汚れたものに思えた。

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2004.2.22 開設