Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
「今日はマツカではないのだね」
「・・」
深紅の瞳が自分に向けて、緩やかに細められた。
右目を覆う眼帯と服の隙間から見える包帯が痛々しくはあったが、美しく整った顔立ちと彼自身の纏う穏やかな空気に、セルジュは思わずトレイを持ったまま棒立ちになっていた。
これが・・・タイプブルー・・オリジン?
そもそもセルジュは鮮血に染まった瀕死の彼しか知らない。
パスカルのように過去の資料を覘き見たわけでもないため、噂話に毛が生えた程度の情報しか持ち合わせていない。
それはオリジンに限ってのことではなく、ミュウという種族そのものについても言えることだった。
普段ターゲットスコープの向こうにいる彼らが、どんなことを思い、どんな風に生きているのかなど勿論知らないし、興味もなかった。
だがこうして、顔を合わせてみるとその事実に驚いてしまう。
ミュウとは・・こんな風に笑う生き物なのか?
俺たちと・・・同じように・・。
「僕はブルー・・君は?」
耳をくすぐるテノールに、セルジュは促されるまま返事を返した。
「・・・セルジュ・・スタージョン」
「そう・・よろしくね、セルジュ」
「・・お、おう・・」
再び流されるまま返事をしたところで、セルジュはようやく我に返った。
・・・待て、名乗ってどうする?!
よろしくしてどうするんだ、俺・・!
相手はミュウの始祖であり元長、タイプブルーオリジン。
300年以上も生き続けている化け物であり、最新鋭の戦闘艦を生身で落とし、その手で数多くの人間を殺めてきた男。
自分は今、最も危険な男と対峙しているのだと言い聞かせると、セルジュは思い出したように彼にキッと睨みをきかせた。
「か、勘違いするなよ。俺はお前と慣れ合うつもりなんか、さらさらないんだからな」
「そう。でもとりあえずそれ、置いたらどうだい?」
「!」
まだ両手に抱えたままだったトレイをサイドボードに置くように促される。
なにやら自分ばかりが敵対意識を奮い立たせているだけで、向こうはそうでもないというのが余計に腹立たしい。
そう思いながらも、セルジュは渋顔で彼の言葉に従った。
「ありがとう」
返って来た言葉と彼の柔らかな笑みに、つんと胸が痛んだ。
どうしてそんな風に笑う?
「・・礼など不要だ。それより、よくのうのうとそうしていれられるな。俺たちの仲間をその手で殺した癖に」
自分の胸に渦巻く不可解な感情を否定するように、セルジュはいきり立った。
するとどうしたことか、オリジンはくすくすと笑みを溢し始めた。
「な・・なにがおかしいんだよ!?」
「そんなに僕が嫌いかい?」
「・・き、嫌いに決まってるだろ!お前みたいな化け物!」
「・・酷いな。僕たちは君たち人間とそう変わりはしないよ」
「嘘をつけ。俺たちはお前たちのように特殊な力もないし、馬鹿みたいに長生きもしない・・自分たちの脅威になるかもしれない存在を化け物と呼んで何が悪い」
言ってやった。
言い切ってやった。
だが、ベッドの上の青年はセルジュの言葉にひるむわけでも、怒りを見せるわけでもなく、試すような笑みを浮かべていた。
「君、本当にそう思っている?」
「・・・ど、どういう意味だよ」
「なんだか無理しているように見えるから」
「・・!」
自分でも気付かない本心をあてられた気がした。
「お、大きなお世話だ!」
荒々しく踵を返すと、セルジュは当初の目的などすっかり忘れて部屋を出て行った。
アニアン大佐が何故オリジンを匿うように保護しているのか。
何故この部屋なのか。
それを知るためだけにここへ来たはずだったが・・ブルーオリジンについて知るということは、つまりは、自分が目を背けていたミュウという存在について知るということだった。
先日のジルベスターセブンの作戦についても、正直に本音を言えば、セルジュは心のどこかでやりすぎだと感じていた。星一つ破壊してまで倒さなければならない相手なのかと疑問に思った。
だがその疑問を認めれば、自分自身を失う気がして怖かった。
あいつらは化け物で、人類の敵で、恐ろしい力を持った存在。
そう単純に理由づけをすれば、何も考えずに済む。
では、大佐はどうなのだろう・・?
大佐の目には、彼らは・・・オリジンはどう映っているのだろうか・・?
・・・結局、疑問に思うことが増えただけだ。
セルジュは大きく溜息をつくと、もやもやとした思いを抱えたままブリッジへと戻っていった。