Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
ジルベスターセブンでの作戦から数日。
艦内も通常の体勢に戻った頃、捕獲したタイプブルーオリジンが死んだという情報がセルジュの耳に入って来た。
ここ数日の戦闘態勢の中、同じメンバーズ内でも捕獲の情報すら知らぬ者も少なくはなかったが、次の任務に集中する彼らにとってそれはさしたる関心事ではないようだった。
セルジュもまた同様で、日々の業務に追われていくうちにブルーオリジンのことなど、すっかり記憶の隅へと忘れ去っていた。
彼のことを思い出したのは、最初に彼を回収してから随分と時間が経った後のことだった。
「うわっ」
「あ!」
その日、足早にブリッジへ向かおうとしていたセルジュは、角を曲がったところで向こうから歩いてきたマツカと衝突した。
「おい、気をつけろよ!」
「す、すいません!」
マツカは何やら手にトレイを抱えていたらしく、その上に乗っていた料理を皿ごと床にぶちまけてしまっている。
・・こいつのやりそうなことだ。
セルジュはマツカのことを、あまりよくは思っていなかった。
正規のメンバーズでもないのに自分たちと同様の制服を身に纏い、常にアニアン大佐の傍にいる。能がないのはわかるが、せめて自分たちの仕事の邪魔だけはしないでほしい。
元より備わるエリート意識と僅かな嫉妬から、ついついセルジュは彼へのあたりが強くなってしまっていた。
「何やってんだよ・・ちゃんと片付けとけよ」
「は・・はい」
冷淡に言い放ち通り過ぎる。
少し進んで振り返ってみると、マツカが料理を皿に戻そうと四苦八苦していた。
あの馬鹿、あんなんじゃ日が暮れるぞ!?
立ち去ろうとしたセルジュだったが、結局近くにあった掃除用具を片手に彼のもとへつかつかと歩いて行った。
「ほら、どけ。そこ拭くから」
「あ、ありがとうございます」
「・・ふん」
正直に言えば、さっきのは自分に非があるような気がしたからなのだが・・エリート意識によるプライドから、マツカの手際の悪さに苛々したからだと自分に言い聞かせた。
ふと無残に汚れた皿の中を見ると、粥のようなペースト状の食べ物が目に付いた。トレイの中身は彼の昼食とばかり思っていたが、そうではないらしい。
「・・それ、流動食か?」
「あ・・はい」
「艦内に誰か病人でもいるのか?」
「いえ・・病人というよりは、酷い怪我を・・・・・」
そう言いかけた途端、マツカははっと何かに気付くと慌てて発言を撤回した。
「ええと、その・・キースが・・アニアン大佐が最近胃の調子が悪いそうなので、消化に良いお食事をと思いまして・・・・・」
「・・・・・・ふーん・・・あ、そ」
「・・・そ、そうなんです・・」
愛想笑いを浮かべながら、マツカは後ずさりをしている。完全に挙動不審である。
セルジュもまた、愛想笑いで返したのだった。
「大佐の部屋、そっちじゃないけどな」
「えっ・・あ・・あはは・・そ、そうでしたね・・。つ、作りなおしに行こうと思って・・じゃあ、失礼します・・!」
マツカはそう取り繕うように言い残すと、彼にしては珍しく機敏な動きで通路を駆けて行った。
「・・・・・あやしい・・あいつ、絶対何か隠してるな」
病人食を抱えて何をこそこそと・・・?
それに怪我人がどうとかと言っていたが・・・・
マツカが独断で何かをしたことは一度もない。
彼はいつもキースからの指示で行動している。
「・・・まさか・・・」
この艦に怪我人がいるとすれば、セルジュには一つだけ思い当たる節があった。
というよりは、思い出したのだ。
1月前、自分が宇宙空間から回収し、その労力も空しく死に至ったと言われた者のことを。
奴は生きているのか・・?
セルジュはブリッジへ向かう用事などそっちのけで、マツカの後を追った。