Novel地球へ・・・

激闘 in シャングリラ！　－後編－

ソルジャーシンVSソルジャーブルー。

注目の最終戦を前に、大会は昼休憩を挟むことになった。 その間に、中継を視聴していたミュウたちにより勝敗予測の思念波投票が行われていた。

『みんなありがとうよ！これといった礼はないが、あたしのキスで我慢しておくれ』

チュッ、と画面に向けてキッスを投げるブラウ。 それを受けて、ミュウたちから軽いブーイングと笑いが送られてきたが、構わずブラウは実況を続けた。

『ん～、勝敗予測は・・・・8対2でソルジャーシンの優勢だねぇ。あたしもそう思うよ。一応、それぞれにコメントも貰ってるから、いくつか読み上げるね』

【キャプテンに勝つなんてすげぇぜ！優勝間違いなしだな、ジョミー！】（戦闘班主任・キム）
【ジョミーならきっと勝てるわ！頑張ってね】（医療班・カリナ＆戦闘班・ニナ）
【ソルジャーシン、講義もそれぐらい熱心に受けていただきたいものです】(ヒルマン教授)
【また無茶をなされて。ソルジャーブルー、終わったらすぐに医務室にお越し下さい】(ドクター・ノルディ)
【ブルー、あまり年甲斐のないことをされてはいけませんよ】（天体の間よりフィシス）
【ソルジャーブルーのバニー姿が見てみたいです】（匿名希望で多数）

『・・・・とまあ、まだまだ沢山あるんだけど、ざっとこんな感じだね。なんだい、なんだい。ソルジャーシンに票を入れている大半は罰ゲーム目当てじゃないかい。 まあ、あたしも見てみたいけどね。エラはどう思うんだい？』
『個人的には、ソルジャーブルーに勝って頂きたいのですが・・やはり肉体的なことを考えると、ソルジャーシンが有利でしょうね』
『そうじゃなくて、バニーのソルジャーブルーを見てみたいか？だよ』
『え・・な・・もう！からかわないで下さい、航海長！』

先ほどまでの、冷静な解説員ぶりとはうってかわり、少女のように頬を染めるエラ女史。 あっはっはっは、と豪快に笑い声を上げるブラウに、付け加えるように「私も・・それは・・勿論、拝見してみたいですが・・」とつぶやいたのだった。

若干の休憩を挟んだ後、既にテーブルについていたジョミーとブルー。 余裕の笑みを浮かべるジョミーの一方、 ブルーはインターバルの間の投票のせいで、罰ゲームへの恐怖がさらに深刻なものになってしまった。

「心の準備はできましたか？」
「・・もう勝った気でいるとは、気の早いことだ。勝負は終わって見なければわからないよ」

そう言いつつも、ブルーは必死に考えていた。ジョミーに勝つ方法を。
いくら心理的な揺さぶりをかけたとはいえ、ハーレイを打ち負かす程のジョミーの勢いにまともに太刀打ちはできない。

ならどうする。

瞬間、ブルーの脳裏にある手段がよぎった。それを用い、彼の注意を引きつけ、隙を突いて倒す。 勿論、サイオン能力を一切使わずに。彼に勝つにはこれ以外にないだろう。
しかしブルーにはためらわれた。
何故ならその方法は、罰ゲームにも勝るとも劣らないほどの羞恥を、ブルーに与える行為だったからだ。

『さあ、お待たせしたね！それじゃあ、注目のカードを始めるよ！』

ブラウの声を合図に、卓上で腕を組み合うジョミーとブルー。 彼らの脇で控えていたゼルが、すう・・と息を吸い込み、次の瞬間、戦いの狼煙を上げた。

「「最終試合・ソルジャーシンVSソルジャーブルー・・・はじめ！！」」

せきを切ったように動いたのは、ジョミーだった。

「くっ・・・・！」
ブルーは決して反応が遅れたわけではなかった。 ジョミーが早すぎたのだ。
溢れんばかりの生命力と若さを感じ、内心打ち震えるブルー。 こんな時でもジョミーの成長を喜ぶ自分に呆れてしまう。

（しかし・・・これほどとは・・っ）

ジョミーは休まることなくブルーを押し返す。

「まだまだっ！」
「っ・・・！！」
掛け声と同時に、より強く加えられた力に、ブルーは完全に敗北を予感した。

いけない・・・！これでは本当に、あの衣装を着ることになってしまう・・！

ブルーは決断を迫られた。
負けてあの衣装を纏って恥をかくか、思いついた手段を使って恥をかきながらも勝つか。
同じ恥なら、ブルーは後者を選ぶことにした。

「ジョミー・・こ、これ以上力を加えてみたまえっ・・」
「ふん、僕には脅しなんて通じませんよ！」

その瞬間、ブルーはジョミーの唇にぶつけるようなキスをした。

「・・・！？」

重なった唇から舌を滑り込ませ、彼を誘うように動かす。

「・・・っ・・・・ん・・」
「・・・・？？！」

『な・・なにを・・！？ブルー、正気？？』

呼びかけるが、反応はない。
それはそうだ。 サイオンでコミュニケーションをとれば、失格になってしまう。

自分のこの思念波も、口を開けて審判のゼルが、実況のブラウが、解説のエラが・・というよりも、 艦内全体が呆けていなければ、即座に失格になっているところだ。

呆気に取られていたジョミーだが、ブルーの扇情的な視線に理性の糸がぷつりと切れた。 そして誘われるままに、無意識にジョミーもまた舌を動かした。 組み合った右手はそのままに、深く長い口付けがしばし続いた。

「・・・・・・・んっ・・」

激しく自分を求めていた、ブルーの舌が僅かに後退した。 ジョミーは夢中でそれを追う。
ややあって手元でコン、と硬質な音が聞こえた。

視界に入ってきたのは、ブルーに倒された自分の拳だった。 同時に、離れていった彼の唇が小さく動いた。

「っ・・・・・・僕の・・勝ち・・・だ」

どうだい？と荒く息をつきながら、薄く微笑む美しい人。潤んだ紅い瞳は未だ、挑発的にジョミーを捕らえていた。
ジョミーはただただ、見惚れてしまった。

「・・あ・・・・あなたって人は・・・」
「・・参ったかい？」
「ええ、完敗ですよ・・」

ああ、どんなに背が伸びても。どんなに力をつけても。
この人には敵わない。

ずるい人だ。

ジョミーは恨めしく思うとともに、愛おしく思った。

惚れた弱みという、敗因を。

「・・機関長、判定は？」
「・・・」
「ゼル！」
「はっ・・はい！」

「「・・・し・・勝者・ソルジャーブルー！よって、ソルジャーブルーペアの勝利じゃ！！」」

ブルーに再三促され、ポカンと口を開けていたゼル審判はようやく我に返った。 が・・・自分で言っておきながら、その勝利の呼び声に疑問も浮かんだ。

（ありゃあ・・反則じゃ・・なかろうか・・？？いや、サイオンは使っておらんかったし・・・）
そうして先程の光景をうっかり思い出し、顔を真っ赤にしてかぶりを振る。

（ええい、ソルジャーブルーにはなんでもありじゃ！）

一方、実況と解説をすっかり忘れていた二人もまた、我に返ってようやく顔を見合わせた。

「エラ、今の・・・流れたのかい？」
「え、ええ・・・シャングリラ中のモニターに・・」
「・・・」
「・・・」

頬を染め、顔に手を当てるエラ女史。 一方のブラウは、次第に押し寄せてくるミュウたちの混乱と悲鳴・・・そして何故か歓喜とソルジャー二人への黄色い声援に、どうしたもんかねぇ・・と笑みすら浮かんでしまった。

『ま、まあ・・・みんな、楽しんでくれたみたいだしね。・・ってことで、この辺でお開きにするよ！以上、激闘inシャングリラ！！進行は実況・ブラウと』
『か・・解説はわたくし、エラで・・お送りいたしました』

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