Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

悩めるスノーホワイト -5-

「喜劇になってしまいましたね・・・」
「もう・・・・・無茶苦茶ですわ・・・」
「幕を下ろすしかあるまい・・」

舞台の混乱に、音響のヒルマン、御馴染みナレーション件シナリオ担当のエラ、そして大道具・機材担当のゼルらが口々に諦めの言葉を口にした。そんな中、一人この状況を楽しんで見ていた監督のブラウがある提案を持ちかけた。

「いや、まだ手はあるよ」
「え・・?」
「いいかい、エラ。すぐにナレーションをつけて・・・・こう言うんだ、いいね?」
「え・・・ええ」

この舞台の状況をあえて利用する・・・きっと劇以上に面白いことになるよ。そう言って手を差し出したブラウ。彼女の手を取って、思念を読み取るエラ。 一瞬、その内容に少し戸惑った彼女だったが、深呼吸ののち、それをそのまま客席に伝えたのだった。

『目を覚ましたブルー姫。しかし、なんと彼女はその美しさゆえに二人の王子に求愛をされてしまったのです。彼女はどちらを選ぶのでしょうか?』

「・・・??・・・・・な・・・・なんのことだ・・・台本と随分違うが・・」

脚本には全く書かれていないナレーションを受け、舞台上で素で戸惑ったのは当のブルー。勿論、台詞をこっそり書いていた手の平を見てもその答えがあるはずもない。 本来なら、彼が最後にハーレイに礼を言ってナレーションとともに幕が下りるはずだったのだ。
途方に暮れたブルーとは裏腹、相対する二人はそうではなかったようで・・・二人の即席王子はナレーションの狙いを知ってか知らずか、急に目の色を変えてじりじりとブルー姫に詰め寄っていった。

「ブルー、ご決断を」
「そうだね、この際はっきりさせた方がいいよ」
「え・・・・・・・・・・」

ジョミー王子とハーレイ王子。
いつになく熱のこもった視線を向けてくる二人に、ブルーは舞台などすっかり忘れて真剣に後ずさる。 その分だけ前進してくる彼らに恐怖すら感じたが、もう遅い。

「私の愛か」
「僕の愛か」
「「どっちを選ぶのかを・・!」」

「・・・!?」

唐突に突きつけられた選択肢。 何故こんなことになったのかと舞台裏を振り返れば、ほくそ笑む監督と、申し訳なさそうだがなんだか嬉しそうでもある顔をした脚本家兼・ナレーション。

こんな話は聞いていない・・!!視線だけで必死に舞台裏に助けを求めるブルー。 しかし、眼前には既にジョミーとハーレイの殺気立った表情が迫っていた。

「どちらですか?」
「どっちなの?」
「・・・・・・いや、・・・・・ど、どちらと言われても・・・・・」

「ブルー、」
「ブルー!」
「・・・・・・!」

たじろいであとずさるブルーに、さらに詰め寄る二人。 これは何がどうと言うより、とにかく自分が答えを言わなければ終わらない。 そうしなければ、既に舞台の幕は下りないようになってしまっているのだ。
なんとしても、この場から退避しなければ。 しかしどうすれば・・・・。

「さあ!」
「さあ・・!」

「ぼ・・・僕は・・・・・・・・」

二人の剣幕に、目を泳がせたブルー。 その瞬間、後ろにいた小人役のリオに目がとまった。

「僕は、リオを選ぶ・・・!」

そう言いながら彼の腕を引っ張ると、目をつぶってずいと盾にしたのだった。

「・・・・・?!!」
『えーーーーーー!?』

二人は声もなく驚愕し、前に出されたリオは思わず悲鳴を上げた。

『い・・・いやですね・・・・・ソ、ソルジャー。わ・・私を巻き込まないで下さいよっ・・』
「すまない、リオ。君を選んで・・・・・心からすまなく・・・思っている・・・・・」
『だったら私を盾にするのを止めてください!もし二人が誤解をしたら・・・・』

ブルーに落とした視線を前方の二人に向けたリオだったが、既に彼らは完全に目が据わっていた。 事態は『もし』どころではなかった。

『ほ・・ほら・・・・言わんこっちゃないじゃないですか・・・・。お、お二人とも・・冗談ですよ?ですよね、ソルジャーブルー。・・・・ソルジャー?』

振り返ると、目に映ったのは舞台袖からこそりとその場を離れるブルーの後姿。
そんな・・・いくらなんでも薄情すぎますよ・・・・ソルジャー・・・。
そう、追いすがろうと手を伸ばすと、背後の二人に引き止められた。

「リオ、君はいつの間にブルーとそんな仲になった?」
「僕を差し置いて、いい度胸だよね」
『いや・・その・・・・ですから・・・』

「「じっくり、聞かせてもらおうか・・!」」

『・・・・!!!』
(ひいいいいいいいっ;)

『か・・勘弁して下さいーーーーー!!』

リオのシャングリラ中に響き渡る絶叫とともに、舞台は強制的に幕を閉じたのだった。



混乱の舞台から一夜明け、シャングリラは平静を取り戻していた。 ジョミーといえば、朝一番に長老たちから呼び出しを受け、先日の騒ぎについて説教をくらったのだった。もはや自分のための歓迎会でもなんでもない、怒りの矛先は全て青の間の万年床に注がれた。

「起きて下さい、ブルー姫。狸寝入りなのはわかってるんです」

ゆさゆさと上掛けを揺するジョミーに、否応なくブルーは頭から被っていたそれから顔を出した。

「・・・ジョミー王子、劇はもう終わったよ」
「僕の中ではまだ終わってません。さっきまで、長老たちに反省会と称してこってり絞られたんですから」
「それは君が劇を混乱させたからだろう」
「元はといえば、あなたが僕を蚊帳の外にして言わないから」
「それは・・・・」

「ブルー、気持ちは嬉しいよ。でもこの船の一員として認めてくれるのなら、僕だって仲間として協力させて。遠くから眺める観客じゃなくて・・同じ場所に立ちたいんだ」
「ジョミー・・・・」

良かれと思っていたことが、ジョミーにとっては疎外でしかなかった。 自らの浅はかさに打ちのめされたブルーだったが、はっきりとした口調で自分たちを『仲間』だと言う少年に、内心嬉しくも思っていた。

「すまない、君がそんな気持ちでいたなんて・・」
「・・・いいですよ、もう。それに・・・全く脈が無いっていうのもわかったし」

ふい、とそっぽを向いて話すジョミー。 少年の少し照れた膨れ面から、ブルーは何について指しているのかを察した。

「・・・・」
「でも、諦めませんから」

変わらず後ろを向いたまま、告白されたその思い。 照れ隠しなのだろうか、と気づいたのは彼が走り去ったあとだった。



「ちょと子供っぽかったかな・・・」

青の間を出て、ため息交じりに午後の講義へ向かうジョミー。
さっきだって、走り去るよりテレポートができれば・・・もうちょっと締りがあるのに。 眠っている姫の心を一瞬で奪う王子になるには、やはりまだまだ鍛錬が必要なのだ。 そう決意を固めると、力強い足取りで自分を奮い立たせたのだった。


一方、少年の去った空間を見つめて、ブルーは昨日を回想していた。 劇の最中、眠りに落ちてしまった彼は、ふいにある思念を感じた。

それは強く、激しく、自分を求める、眩しいくらいにまっすぐな感情。

―『渡すもんか!』

その幼くも熱い思いに、思わず手放していた意識を掴みとり、浮上させた。

(なぜかな)

(本当のことを言うとね)

(舞台で君を見つけて、僕は少し嬉しかったんだ)

王子候補生の去った寝室で、ほんのり頬を染めたスノーホワイトは再び眠りについたのだった。


Fin

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2004.2.22 開設