Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

Memory of a pain -1-

新学期の朝、始業前の校庭でサッカーをしている少年たち。
その日転校してきたばかりのキースが通りかかると、見ない顔だと思ったのだろう。 その中の一人がボールを蹴ってきた。

「ノアのグラウンドはここより広い?」
ボールを足で受け止めたキースは、突然の問いに驚いたものの、笑みを浮かべて返した。
「いや、こちらのほうが広いかな」
「やっぱり!惑星ノアからの転校生だ。僕はジョミー。君と同じ2-Bのジョミー=マーキス=シンだ」
「キースだ。キース=アニアン」

握手の代わりとばかりに、キースは受け止めたサッカーボールをジョミーへ向けて蹴り返した。



ずっと昔からの友達だったのかもしれない。 そう思うほど、ジョミーとキースは驚くほどすぐに打ち解けた。
それは昼休みが半ばを過ぎた頃だった。

「キース、いい場所に連れて行ってやるよ」
「?いい場所・・?」
「そ、格好の昼寝スポット&サボりスポット!」
それはお前にとってだけ『いい場所』じゃないのか、と言うキースをよそに、ジョミーは嬉しそうに屋上へと彼をひっぱって行った。教師が開けるところを見たんだ、と南京錠のかかった扉を器用に開けるジョミー。差し込んできた日の光に目がくらんだのは一瞬。学校の周辺を一望できる景観に、キースも頬を緩ませた。

「あー、やられた~」
「なんだ、どうした?」

屋上備え付けの貯水タンク。その脇にあるスペースを見上げて、ジョミーは肩を落とした。 良く見ると、何者かが横になっているのか、男子生徒と思しき足だけがこちらを向いていた。

「・・先客だよ」
「?」
「いっつも僕より先に来てとっちゃうんだよな」
場所をとられて落ち込んでいるというより、ジョミーはどちらかと言えば嬉しそうだ。その表情に、そこにいるのは彼の極めて親しい人間なのだとキースは理解した。

「・・心外だな。鍵のナンバーをそれとなく先生から聞きだしたのは僕じゃないか」

声の主は昼寝スポットの先客。
「最初の一桁だけでしょ。あとの二つは僕の動態視力に感謝してよ、ブルー」

起き上がってジョミーを見下ろす少年の瞳が、その隣の人物を見つけて僅かに揺れた。
それはキースもまた、同じだった。

風にそよぐ銀の髪が光に透けて綺麗で、目を細めた。 それよりも何よりも、吸い込まれてしまいそうな紅い瞳。
瞬間、キースの中で何かがズキリと傷んだ。
どうしようもない喪失感、罪悪感。苛立ち。そして喜び。
様々な感情が一気に溢れそうになる。

なんだ・・?
俺は・・知っているのか?
この紅を・・・知っている・・・?

「彼は・・?」
「ああ、ノア学園からの転校生」
「・・そう、君のクラスだったんだね」
「生徒名簿見て知ってると思うけど、紹介するよ。彼が転校生のキース。・・・で、キース。この人が一応、この学園の生徒会長。3年のブルー先輩」
「一応も何も、れっきとした生徒会長だよ」

抗議を漏らしながら、梯子を降りてきたブルー。 裾を払い、二人の前に立つと、キースに右手を差し出した。

「3-Aのブルーだ。我がシャングリラ学園にようこそ」
「・・・」
「キース」

名を呼ばれて、微笑みかけられてしばらく。 キースは自分が呆然とブルーを見つめていたことに気がついた。

「・・ああ、キース・・アニアンだ。ありがとう」

高鳴る鼓動の音が伝わってしまわないように、キースは自分より少し体温の低い手を握り返した。



「へ~・・・」
「なんだ?」
「いや、キースみたいな奴でも、ブルーを目の前にするとああいう風になるんだなーって」
「・・どういう意味だ?」

にやにやとした表情をちらりと向けながら、階段を下りるジョミーと彼に続くキース。 もう一眠りすると言うブルーに追い払われ、屋上を後にした彼らは教室へと足早に戻る途中であった。

「またまた。ガン見してたくせに」
「っ・・・あれは・・珍しかっただけだ」
「髪の色と目の色?ああ、確かに・・世界中探しても僕ぐらいかもね・・ってブルー、言ってたことあったっけ。・・・・でも、それだけ?」
「・・・・くどい」

未だにやにやと視線を投げかけてくるジョミーに、キースは仕返しとばかりに彼を抜いて階段を駆け下りた。タイミング良く鳴り響いた予鈴がスタートの合図だった。
「教室まで一本勝負」
「あ!ずるい!」
「俺の勝ちだな」
「まだまだ!・・って、キース、次の授業は?!」
「世界史B。時間割を転校生に教えてもらうのはどうかと思うが」
「!?~~~ゼル先生じゃないか!いそげ~!」
一段ずつ階段を駆け下りていたジョミーだったが、そのキースの答えに二段飛ばしに走行方法を変える。その勢いのまま、先行していたキースをも抜いてしまう。

「?」
「知らないのか?ゼル先生の授業に遅れたら、それは恐ろしい・・・」
「なんだ?」
「・・・やっぱ言わない。知りたかったら・・遅れてみればー?」
「それは遠慮しておく」

ジョミーに遅れていたキースもまた、二段、三段と飛ばして階段を駆け下り、彼に迫っていった。
「うわ!早!」
「リーチの差だな」
「むかつく奴」
「お互い様だ」

階段を駆け下りながら笑い合う二人の声が、回廊に響いた頃。 一方、屋上では午後の授業をパスしたブルーが、ただぼんやりと雲一つない空を眺めていた。

「・・・キース・・・アニアン」

その名を呼んだ瞬間。ズキリと右目が傷んだ。 もう随分前から、その痛みはブルーを襲っていた。
怪我をしたわけでもない。見え方がおかしいわけでもない。ただ、緩やかに疼く様な痛みだけが時折訪れるのだ。

「キース・・・」

もう一度その名を呼ぶ。
握り返された右手を眺めると、痛みを持つ瞼に触れさせてみた。
高鳴る鼓動の音が、彼に伝わればいいのにと。

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2004.2.22 開設