Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
ジョミーがブルーの与えた拷問・・・否、好意に顔を引きつらせて数分が過ぎた頃。場内の照明がゆっくりと暗転し、開演を知らせる低重音のブザーが鳴り響いた。
その音が途切れた瞬間、目の前の真紅の幕がゆっくりと上がり始めた。 ざわついていた観客席はいつの間にか静まり、みな固唾を呑んでその様子を見守っていた。 かくいうジョミーも、そのうちの一人だった。
幕が完全に上がり終わると、舞台背面のスクリーンに美しい森林の風景が映し出された。続けて聞こえてくる小川の流れと、心地良く響く鳥の鳴き声。 それらをバックに、落ち着いた女性の声でナレーションが聞こえてきた。
『これは昔々の地球のお話・・。シャングリラという国に、それは美しい、雪のような肌を持つ姫がいました』
それはジョミーが歴史の講義で嫌というほど慣れ親しんでいた、女長老のものだった。ナレーションを言い終えるとともに、スポットライトが舞台中央をとらえた。 照らし出された者の姿に、ジョミーは思わず客席から転げ落ちたのだった。
『彼女の名は、ブルー。ブルー姫といいました』
現れた麗しい青年の姿に、客席からは歓声と黄色い声援が起こった。
ソルジャーブルー。
彼は普段の繊細な、銀を基調としたミュウ服から一変。レースとフリルがあしらわれた白のブラウス、その胸元には黄色のスカーフ。
腿まで若干ふくらみのある黒のズボンに、同色の細身のブーツという出で立ちだった。トレードマークの補聴器は赤いカチューシャに姿を変えていた。加えて、幾重かに巻かれた腰のベルトに携えた剣が、なんとも中性的なアクセントになっていた。
『しかし、その余りの美しさが逆に彼女に不幸をもたらすかもしれない。そう考えた彼女の両親は、姫を男性として育てたのでした』
「な・・・・な・・・・・・・・」
折りたたみ式の腰掛をよろよろと手で戻して座り直すと、信じられないものを見るように舞台を見つめた。
(ブルーがおひめさま・・!?・・・ていうか、なにこの設定・・!?)
『しかしそんな両親の思いも虚しく、シャングリラ王国は突如現れた悪い魔女に乗っ取られてしまいました。たまたま狩りに出ていて難を逃れたブルー姫でしたが、帰りを待ってくれているはずの両親は王位を剥奪され、魔女の家来にされました。お城にはもう、ブルー姫の戻る場所などありませんでした』
「僕は一体・・・これからどうすればいいのだろう・・」
真紅の瞳は憂いを帯び、悲痛に顔を歪めるブルー姫。迫真の演技に、観客はすっかり見入ってしまっていた。 しかし、当の主演女優(?)の意識は全く別のところにあった。
(っ・・・・やはり耳の内部に装着するタイプは不快だ)
いつもの補聴器が演技には邪魔になるということで、小型の補聴器を耳の内部に装着していたブルー。 鼓膜に直接音を伝える際に起こる僅かな振動、そして耳の内部にある慣れない異物感。
(・・・・・・・かゆい)
単に、それらの不快感が顔に出てしまっただけだった。
一方、舞台裏。 忙しく指示をしている音響のヒルマン、機材担当のゼルを除いた二人の運営委員は、袖から舞台の様子と客席の反応を見ていた。
「なかなか好評のようじゃないか、ブルー姫。男装の麗人とは・・エラ、あんたいいセンスしてるよ」
「ソルジャーの魅力を十分に生かすには、下手な女装よりあちらの方がいいかと思いまして」
ブラウ監督の言葉に、脚本家兼、ナレーションのエラはふふ、と笑みをこぼした。
ドレスを着ない。普段の口調で話す。
それは女性の役だと聞いて、当初嫌がっていたブルーへの救済策も兼ねていた。
その頃、舞台は場面替えをし、森を歩いていたブルー姫は小さな小屋の前に来ていた。 大分脚色されてはいるが、これは童話の「白雪姫」のつもりなのだろう。 ジョミーがそう気づいたのは、小屋に入ったブルーが7つの食器、7つの椅子、7つのベッドを物珍しげに見ているときだった。
「なんだか眠くなってしまった・・・・」
そう言うと、ベッドの一つに腰を落として、ぱたりと横になるブルー姫。
暫く間をおいて、陽気な音楽とともにジョミーの見知った者たちがぞろぞろと舞台に現れた。
現れた7人の小人はリオ、キム、カリナ、ニナ、ユゥイ、トキ、ルリ。各々にカラフルな配色の、しかしお揃いのデザインの服と帽子を身にまとっていた。
「うわ・・・?!なんだ・・・?」
「誰か勝手に入って寝てる・・!」
「綺麗な人~」
「お人形みたいね」
『ああ、私のベッドが・・・・』
小屋に入った彼らは、ブルー姫を見つけるとそれぞれ感想を述べた。小さなベッドの並ぶ中、唯一サイズの合うリオのベッドを占領した彼女。 7人がその周りを物珍しげに取り囲むと、その気配を感じたのか、長い睫毛に縁取られた瞼がぱちりと開いた。
「・・なんだ、君たちは?」
「それはこっちの台詞だぜ」
赤い服を着た小人B・キムは横柄な態度でブルーの前にしゃしゃり出た。
が、次の瞬間、何故か彼は頬を染めた。
(うわ・・・ソルジャーブルー・・間近で見るとめちゃくちゃ綺麗だ・・。睫毛長ぇ~・・・目大きい~・・・・ホントにお姫様みたいだなぁ。・・・・・・・・・・って、バカ!俺!なに考えてるんだよ・・!)
舞台に訪れる僅かな沈黙。 耐えかねて、背後のニナとカリナがひそひそと声をかけてきた。
(キム、キム!台詞)
(「お前こそ何なんだ?」って言わなきゃ)
「え・・?・・・!あ・・・!お・・お前こそ、な・・なななんなんだ・・!?」
しどろもどろに繋いだ台詞は、観客の笑いを誘うには十分だった。その客席の反応に、さらにカーッと顔を紅潮させるキム。
「僕はブルー。訳あって素性は語れないのだが・・・・・今、行くあてがないんだ。どうか、僕を暫くここに置いてもらえないだろうか・・?」
相変わらずベッドに腰掛けたブルーは、小人たちを見上げるような形で懇願した。間近にいたキムは、ブルーの上目遣いをモロに受けてしまい、思わず叫んだ。
「も、もちろんです!!」
(あー!キム、それあたしの台詞!)
(ていうか、そんなに展開早かったっけ?)
(違うよ、みんなで相談するシーンがあって・・それからニナが返事するんだよ)
台詞を奪われた二ナが小さく叫び、一番後ろにいたトキとユゥイがひそひそと会話をする。
『キ、キム、それより、とりあえずその手を離しましょう。客席が怖いので・・・』
「・・・?・・・」
リオに言われてなんのことかと手元を見るキム。 なんと、先ほど返事をした際、勢いあまってブルーの手をぎゅっと握ってしまっていたのだ。
「・・・!!?」
きょとん、とした表情のブルーに、す、すいません!と思わず大きな声で謝る。しかしそれがまた、観衆を笑いの渦に誘った。
『・・・こうして、王国を追われたブルー姫は7人の小人たちの下に身を寄せることとなりました』
フォローとばかりに、入れられたナレーション。
その終了とともに、舞台の切り替えのためそこで一旦幕が下ろされることになった。
キムはゆっくり降りてくるカーテンの隙間からふと客席を見た。
すると、随分広くとった最前列で彼を忌々しげに見る一人の少年がいた。
その視線は「キム、殺す」と語っていた。
とりあえず舞台終わったら謝りに行こう・・・・。
小人Bはそう心に誓ったのだった。