Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

風紀委員長の日課 -3- side:Blue

月初めの生徒会長室は慌しい。

前の月に決めた各委員会の目標に対する結果報告と、各々の委員会で月初めに新たに決まった目標。そしてその月の行事全般の詳細の報告があるからだ。報告は各委員会を束ねる委員長が直に生徒会長を訪れるというのが、このシャングリラ学園の慣わしだった。
現に、美化委員長である2年の女子生徒が今まさにブルーを訪れていた。

「以上が、先日の美化委員会で決まった全校大掃除の学年担当区域です」
「こちらでも目を通しておきます。ご苦労様」

失礼いたします、と退室する女子生徒の声と半分被って、今度は元気一杯に「失礼します!」と、日に焼けた体格のいい男子生徒が入ってきた。

(体育委員長か。体育祭も迫っているし・・これは長くなりそうだな)

秋の定例報告は、どの委員会も報告の量が多い。
夏休み明けの体育祭。その直後に控えた文化祭。過ごし易い秋の気候は、その名の通り読書にも、校内総出の清掃にもうってつけだ。 その部門の委員会だけでなく、大型行事にオールマイティに動くHR・評議委員会。 それらの行事に欠く事のできない放送委員会。

息つく間もなく、怒涛の量の報告と資料を渡され、それを一つ一つ吟味する。いくら入学から半年で学園を担う重責を任されたブルーといえど、 それらを要領よくこなす術を彼はまだ知らなかった。

そうしてやっと一息ついた頃には、放課後の校庭は茜色に染まっていた。山積みになった報告資料を委員会別の棚にしまい込むと、 まだ報告を済ませていない委員会があることに気がついた。ブルーははてと首をかしげた。

そこがとりわけ忙しいのは、今の時期よりむしろ新入生を迎える春先。そして強いて言うなら、気を引き締める意味で長期休み明け。 これまで報告に訪れた委員会の面々のように、何か大きな行事があるわけでもない。 しかし日常の学園生活において、正真正銘、最も重要な部門には違いない。

彼は何をもたついているのだろうか。

そうこうしているうちに、木製の扉を二度軽く叩く音がした。

「どうぞ」
「・・失礼する」

整然と入室してきた同学年の風紀委員長は、最初に資料を手渡すと、表情を崩さないまま一切の無駄もない報告を行った。


「以上が、先月の風紀検査の違反者数と傾向。遅刻者の統計と指導報告だ」
「ご苦労様。遅刻者は前年比30パーセント減か・・・君が決めた『生徒指導室送り』の効果は凄いね。生徒指導のハーレイ先生とゼル先生も喜んでいたよ。成果が嬉しいというより、あれは指導相手ができて嬉しいんだろうね」

お説教が好きな年代だから、と笑みを零すブルーの余談に答えることもなく、キースは委員長の責務を淡々ときりだした。

「・・・当然の案を出したまでだ。しかしそれも、生徒会執行部にも協力して貰わなければ意味がない」
「・・?どういうことだ・・?」

疑問符のついたブルーに、キースが怪な顔で付け加えた。

「そちらの2年の書記が、先月3度の遅刻をした。・・知らなかったのか?」
「ああ。・・聞いていない、な」

会長が1年ということで舐められているのか、ばれないと思って黙っているのか・・・十中八九、前者だろうとブルーはため息をついた。 推薦を受け、ブルーは確かに多くの生徒の支持を受け会長の椅子に座ることとなった。しかし、その全てが自分を受け入れているとは限らない。
その最たるものが、この生徒会執行部そのものだった。

前会長時代から役職を留任する者が多い中、新米の最下級生の会長が現れては何かと都合が悪いのだろう。 現にこの一月の間だけでも、必要な、重要な情報が上がってこないことが度々見受けられた。 正直、そういうことをされるのは予想の範疇だったが、原因は自分の力不足に他ならない。

「わかった、これからないように注意をしておくよ」
「必要があれば、風紀からも注意を促すが・・」
「いや、これは僕の仕事だ」

気落ちする1年生の表情を見せたのは一瞬のことで、会長の顔に戻ったブルーはいらぬ申し出は結構とキースの言葉を一蹴した。 一方のキースはといえば、動かぬ表情のまま、しかし微妙な間を置いたあと「そうか」と会話を終わらせた。

ああ、そうか。
今の一言はきっと彼なりの気遣いだったのだ。

頼ってみればよかったかな、と小さな後悔をすると、相手は退室の兆しを見せ、既に卓上に広げた書類を鞄に直していた。

「報告は以上だ。失礼する」
「委員長」
「・・?」

踵を返した途端に呼び止められ、蒼い瞳が疑問符を浮かべてこちらを振り返った。

・・・振り返ってしまった。

否、呼んだのだから、振り返るのは当たり前だ。しかしブルーは次の言葉を全く考えていなかった。 なんとなく、彼を引き止めたかっただけなのだ。

さて、どうしよう。

「ええと・・・・・今日は何か用事でも?」
「何故だ?」
「・・だって、君の委員会は今日会議も何もなかっただろう。どうしてどの委員会よりも遅れて報告に来たんだ?」
「・・・」

瞬時に浮かんだ話題としては、さり気なく適格だ。しかし一般的な会話をしたつもりのブルーとは対照的に、 報告が遅い、と咎められたような印象を受けたのだろう。キースは少しばつが悪そうな表情でそっぽを向いた。

そんな顔もするんだ。

その表情が珍しくて、ブルーは思わず食い入るように彼を見た。その真意を知らぬキースといえば、珍しく寄せられた眉間のシワと自分を凝視してくる二つのルビーに、さらなる威圧感を覚え、渋々口を開いた。

「・・立て続けでは・・・」
「?」
「・・疲れるだろうと、思っただけだ。無用なら改善する」

相変わらず目を逸らしてそう言い放つと、キースはそのまま扉に手をかけ、一礼をして部屋を出て行ってしまった。

振られた。
そして厳重注意だ。                         うん、やっぱり優しい。

会長室の前で肩を落とす風紀委員長とは裏腹に、部屋の主がはにかみを押さえようと渡された資料で顔を隠したことを、勿論彼は知る由もなかった。

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2004.2.22 開設