Memory of a pain |
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
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1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
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キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
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前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
何かに急激に引き寄せられる。
決まって、奈落に落ちるような感覚に襲われて寝付く時。
完全に夢に落ちなくてもわかるようになった。
またあの夢だ。
無機質な空間に辿り着けば、対峙する二人の男が否応にも視界に入る。 一人は自分。もう一人は・・・やはり顔がわからない。 呆然とその状況を見ていた頃とは違う、ここは随分と科学が進んだ世界なのだ。 端末一つをとっても、キースの知るものより高性能に見える。
『ど・・した・・?・・のように・・這いつくばっているだけでは・・落とせんぞ』
途切れ途切れに聞こえる男の声に、キースは首を振った。 見る度に鮮明になっていく夢の情景は無性にキースの心を乱した。
夢の自分が男に歩み寄る。
また殺すのか。
もう何度、この男を自分は殺したのだろう?
違う、間違うな。
これは夢。
俺じゃない。
そう心で繰り返しながら、キースはいつからか自覚していた。
これはただの夢ではないということを。
人は一生のうちで、同じ夢を見ることはありえないとどこかで聞いたことがある。
では、何度も繰り返すこれは一体何だというのか・・?
夢ではなければ何か。
キースの中で、その答えは既に出ていた。
自分の持っている記憶。
別の世界。未来・・いや、過去かもしれない。
過去・・・?前世・・?
その瞬間、何故かブルーの顔が脳裏に浮かんだ。
執行委員の業務連絡で生徒会室を訪れたキースは、扉の前で動きを止めた。
普段なら何の躊躇も緊張も感じない眼前のそれだが、今日はノックするにも少々の勇気を要した。それというのも昨日の放課後、キースは屋上でブルーに口付けた。いや、先に向うからキスをされた。
直後に生徒会の後輩がブルーを呼びに屋上へ現われたため、理由も聞けずフォローもできず。慌ててそっぽを向いたまま別れたきりだったのだ。
意を決して二度叩けば、普段と変わらないテノールが入室を促した。
「やあ・・・」
「・・・ああ」
挨拶ともとれない挨拶をすると、なんとも言えない間が訪れる。 どう話題を切り出そうかと思っていたキースだったが、ブルーから予想外の言葉が返ってきた。
「昨日はごめんね。その・・・君の・・唇を奪ってしまって」
「・・・・・」
心情をそのまま行動で表したなら、その場にひっくり返ったかもしれない。
硬直したまま苦笑いを浮かべるだけのキースに、何か可笑しいことをいったかい?とブルーが不思議そうに覗き込んできた。
「いや・・・・」
確かに当てはまらないこともないが・・・。もっと別の言い方はなかったのだろうか、と半ば呆れるキースをよそにブルーは続けた。
「なんというか、僕も何故あんなことをしたのかよくわからいんだ」
「・・・」
「だから、君も気にしなくていいよ。そうだな・・犬や猫に噛まれたくらいに思ってくれればいい」
「・・・・なんだそれは」
「・・だから、気にしなくていいってこと」
この話は終了、とばかりに後ろを向いたブルーは手元の資料にわざとらしく目を通しだした。
その態度にむっとしたキースは、思わず本音を吐露した。
「噛まれた方はそうは思っていない。気になるさ」
「・・」
「お前のことが、気になる」
その言葉に、チラリと顔だけでキースを振り返るブルー。
「それは・・・どういう意味?」
「・・・・どうもこうも・・」
「・・言ってくれないとわからない」
「・・・だから」
「・・だから?」
じっと見つめてくるブルーに、そしてこの状況に耐えかねて。
「だから・・・俺はお前が好きだということだ!」
思い切り良く発した告白の言葉に、ブルーは一瞬瞳を丸くしたものの、満足そうに微笑んだ。
「情熱的だね」
くすくすと笑う想い人が悪魔に見えた。
言わされた。完全に誘導された。
頭を抱えるキースに、いつの間にかはにかむブルーが目の前にいた。
「でも奇遇だね」
「?」
「僕も同じこと思ってた」
キースが回らない頭でその意味を確かめる前に、彼の頬にそっと口付けが落とされた。
「不思議なものだな」
「?」
屋上の給水塔横。
生徒会室を抜け出したブルーと、その手を握ってやはり代わり映えの無い空を眺める。
「お前とは、ずっとどこかで会ったような気がする」
「・・そう?」
「ほら、前に言っていただろう。前世とか」
「・・・ああ、あれ・・」
同意をするものだと思っていたブルーは、見たことの無い嫌に乾いた笑みを浮かべた。
「・・・もういいじゃないか」
「?」
「過去とか、前世とか。馬鹿みたいだ」
「お前が言い出したんだろう?」
「そういうこと、言ってみたかっただけだよ。そんな夢みたいなこと本気で信じてるわけないじゃないか」
先日の自分の言葉すら否定し、心底くだらない、と吐き捨てるブルー。 彼の変化に酷く違和感を覚えながらも、キースにはまだその意味がわからなかった。
「夢・・?」
「そう、夢だよ」
銃口を向けた自分。
相手は誰だった?
夢と言う単語に、何故か今朝の情景が思い出された。
「そんなこと。もう、どうでもいい」
確かにどうでもいいことだ。
ただの夢なんだ。
あれは俺じゃない。
けど・・・。
「どうだっていいよ」
本当にそうなのか?