Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
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番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
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同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
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アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
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キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
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アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

Memory of a pain -8-

あの時の自分は、どんな顔をしていたのだろう。

ブルーは傘に隠れたキースの背を追いながら、彼のマンションへと向かっていた。
雨はまだ強弱をつけながらも降り続いていたが、駅で購入したビニール傘が多少の雨よけにはなっていた。

「ここまで濡れたら、差さなくても変わらないかもね」
「だったら、差さずに歩いてみたらどうだ?」
「嫌だよ。キースがやってみてよ」

何で俺が、と迷惑そうに返してくる声はいつものキースで。 言い出しっぺのブルーといえば、くすくすと笑みをこぼしていた。


『早く帰ろうって言ってるだろ!』

キースの驚いた表情が、目に焼き付いていた。きっとキースもそうに違いない。 自分は一体どんな顔をしていたのだろうと考えると、怖くなった。
そう、怖かった。

出会ってから1月余りが経過したが、キースの記憶は戻っていない。 何かを感じることはあるのかもしれないが、明確に過去を思い起こすような素振りはない。 ずっと戻らなければいいのにとブルーは思う。

地球のことも。
ミュウという種族のことも。
全てを管理していたシステムのことも。
今この世界では歴史の中の数ページにその痕跡を残す程度だった。 懐かしむように、愛しむように引き寄せられたはずのその星の記憶は、今のブルーにとっては煩わしいものでしかなかった。

キースに触れさせてはいけない。
何も思い出さなければ、今のままでいられるのだから。
ブルーには確信があった。
記憶を取り戻すようなことがあれば、キースはきっと自分の傍から離れて行ってしまう。
そう思う度に覚える右目の痛みは、何かのシグナルにも思えた。



「ここが?」
「・・ああ」
辿り着いた建物を意外そうに見上げなら、ブルーは出入り口へ向かうキースのあとを追った。集合ポストの並ぶ質素なフロアで傘の水気を叩けば、キースは日課なのであろうポストの中身をチェックしていた。

「君のことだから、てっきり大理石の玄関の高層マンションかと思ってたのに」
「そんなわけないだろ」
「何号室?」
「302」

エレベータを待とうとしていたキースを置いて、ブルーはすぐ傍の階段に足を向けた。
「どっちが早いか競争」
「は?おい!」

階段を駆け上がるブルーに、到着したエレベータに乗り込もうとしたキースは方向転換を余儀なくされた。暫くして自分を追ってくる足音を耳にして、ブルーは笑みを浮かべると追いつかれまいと速度を上げた。

「・・けっこう・・体力・・使うね」
「当たり前だ・・」

互いに度合いは違えど、息を切らしながら辿り着いた部屋の前で二人は扉に背を預けていた。
「僕の勝ちだったんだから・・何か奢ってよ」
「そんな約束した覚えはないし、勝負したつもりもない」
「追ってきたくせに」
「乗るより早いと思ったからだ。第一、俺がいないと鍵が開かないだろう」
ガキじゃあるまいし、と背を起こしたキースが、鞄から部屋の鍵を取り出している。
相変わらず扉にもたれたままのブルーは、そんなキースの様子を愉快そうに見ていた。

「今度は通せんぼか」
「開けたければ僕をどかしてみれば?」
扉を塞ぐブルーに、キースは溜息をついた。

「・・どうしたんだ?」
「・・ん」

先ほどまでとは違って、キースはいつになく厳しい表情でブルーをじっと見つめていた。

「怒ったかと思えば、急にはしゃいで・・・わけがわからない」
「・・僕にもわからない」
「?」

ブルーはそれまで支えにしていた両手を、キースの首元に回した。
息がかかるほどの距離に顔を近づけると、触れ合うだけの口づけを交わす。

「何がしたいんだ?」
「・・捕まえたいんだ」

何をと問うキースの唇を、ブルーが塞いだ。 ブルーは舌を差し入れると、戸惑うキースのそれを絡めとった。 そうして貪るように口づけると、今度は一方的に突き放す。

「・・キース・・前に僕のこと、好きだって言ってくれたよね・・」
「・・ああ」
「だったら・・証明して」

「証明してよ・・」

ただ自分だけを見つめるこの青を、捕まえていておきたかった。

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2004.2.22 開設