Novel地球へ・・・

キース×ブルー

Memory of a pain
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
番外編:隠し事
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結)
side : Jommy
1 2 3
同タイトルのジョミー視点のお話。(完結)
風紀委員長の日課
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結)
鉄仮面の失敗
1 2 3 4 5
アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結)
セルジュ=スタージョンの疑問
1 2 3 4 5 6 7
キース×ブルー←セルジュ(完結)

ジョミー×ブルー

激闘 in シャングリラ!
前編 中編 後編 後日談
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結)
悩めるスノーホワイト
1 2 3 4 5
アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結)

風紀委員長の日課 -2- side:Kieth

朝一番のまばらな登校風景が賑わいを見せ始める頃、彼の日課は幕を開ける。
各々の教室でホームルームが始まるのが8時半。それは同時に、登校のリミットタイムでもあった。

5分前の予鈴に、みな足早に校舎へと向かう。その波が終わった頃が彼の本番だ。ただの通過点だった校門が、関所へと変わる瞬間である。

「おはよーう、キース!今日も精が出るなぁ。で、俺は・・滑り込みセーフ!・・・・だよな?」
「おはよう、サム。いや、残念だがアウトだ」
「まじで・・!?」

俺の時計では・・と手首と校庭中央に飾られた柱時計を確認する友人は、次の瞬間「「げ、俺の時計・・1分遅れてる・・!」」と声をあげたのだった。

「お前はまだ今月に入って1回目だ。今月中にあと2回、同じミスをしない限り問題ないだろう」
「お、おう。(ミス、しそうだなぁ・・)じゃあ教室でな、キース!」

生徒名:サム=ヒューストン
学年:1年9組
登校時間:8時31分10秒
遅刻理由:腕時計の遅れ

手元の遅刻者表にそう記入すると、校舎へ駆け込みながらも手をかざすサムに、同様に答えたのだった。


『同月に遅刻を3回行った者は、生徒指導室にて担当教諭の特別指導を受ける』

この一文を生徒手帳の遅刻・早退項目の中に加えたこと。それがキースが風紀委員長として行った初めての仕事だった。
遅刻者減を狙った画期的な発案で、それは生徒たちからたちまち『生徒指導室送り』と恐れられるようになっていた。勿論、風紀委員のキースはただ遅刻者を送り出すだけで、彼らを叱るのは生徒指導の教師の役目である。その教師たちに若干癖があり、説教時間が類になく長いということが嫌煙される一番の要因であった。

勿論、この発案に反対がないわけではなかった。
特に猛反発したのは、同じ風紀委員の上級生たちだった。仕事を増やすことが反発を買ったのか、1年の委員長へのやっかみか・・・恐らくその両方だろう。 当の生徒指導室の教諭たちの後押しがなければ、実現不可能だったに違いない。

この仕組みを導入してから、そしてキースが風紀の長に推薦されてから1ヶ月。

遅刻者数は順調に減少し始めたが、指導室送りを回避しようと、ボーダーの時間帯に危険な校門への滑り込みを行う者が続出し始めたのが、この制度の唯一の難点だった。 現に今も、4人、5人。サム同様に滑り込もうとする生徒を牽制し、静止させる。

しかし授業開始時刻が近づくにつれ、現れた遅刻者はみな観念したように自主的にキースへ向かって歩いてくるようになった。問題の際どい時間軸を超えると、この日課は至って平穏だ。

任務終了まであと5分。
ふと、キースは校舎を見上げた。

南校舎2階部分。

端教室。

窓際後ろから3番目。

そこに彼はいた。

自分と同じ、下位学年を示す赤いタイ。
それよりもなお紅い瞳。
朝日に照らされて透けた、くせのある銀糸の髪。

目はいいほうだ。だから遠目でもわかる。
彼はいつもホームルームを聞いていない。

自分もこの日課によって殆ど出席をしていないが、稀にある時間割変更を覗けば、各委員の委員会報告や配布物など、熱を入れて聞かなくともさして問題はない。 何より彼は、同報告をさらに細かく、生徒会長室で事前に耳にしている。聞かないのも無理はない。

黒板に目を向ける窓際の生徒たちの中、彼はただ一人、頬杖をついてぼんやりと窓の外を見つめていた。
晩秋の空。いや、色付き始めた校庭の背の高い木々かもしれない。彼の瞳に映るものが何なのか、当たりも外れもわからない予想を毎日繰り返す。 そして最後に、ふっ、と口元を緩ませる。

ほんの瞬きのような至福の時間。
その終わりを告げるように、授業開始5分前の予鈴が鳴り響いた。小走りで近づいてきた最後の遅刻者と向き合い、仕事を終えると、 キースもまた慣れた足取りで校舎へ戻っていく。

それが彼の日課だった。

BACK  TOP  NEXT

2004.2.22 開設