Memory of a pain |
---|
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 番外編:隠し事 |
過去の記憶を持つブルーと持たないキース。痛みの記憶と向き合う転生パラレル。(完結) |
side : Jommy |
1 2 3 |
同タイトルのジョミー視点のお話。(完結) |
風紀委員長の日課 |
---|
1 2 3 4 番外編:Valentine’s Day |
風紀委員長キースと生徒会長ブルーの初々しい学園パラレル。(完結) |
鉄仮面の失敗 |
---|
1 2 3 4 5 |
アニメ15話捏造話。シャングリラ脱出の際、キースが犯したミスとは・・?(完結) |
セルジュ=スタージョンの疑問 |
---|
1 2 3 4 5 6 7 |
キース×ブルー←セルジュ(完結) |
激闘 in シャングリラ! |
---|
前編 中編 後編 後日談 |
ブルーの一言で、シャングリラ中を巻き込んでの腕相撲大会が行われ・・?(完結) |
悩めるスノーホワイト |
---|
1 2 3 4 5 |
アルテメシアを発って1年、少し遅めのジョミーの歓迎会が開かれることになったシャングリラ。(完結) |
ジョミーは彼の目覚めを知らなかった。
捕虜の救出にやって来た小型艇への対応のためにナスカに降り立ち、しかしそれが適わぬまま絶望の淵でカリナを見取った。
それは、ようやく先刻の問題を処理しようと、通信塔を出ようとした矢先のことだった。
ブリッジからフィシスにより緊急通信が入ったのだ。発信者はその場にいることすら珍しいというのに、さらに珍しく酷く慌てた様子で、ジョミーに願い出た。
助けて、ブルーが連れて行かれてしまった、と。
思念体では埒が明かない。
カリナの一件で、その有能さと無力さを痛感したジョミー。彼はまだ遠く離れていないブルーのかすかなサイオンを必死で感じ取ると、
生身でテレポートを使ってこの場に現れたのだった。
空中に浮いたままのジョミーは、はっと二人の状況を見た。
壁に押し付けるようにされたブルー。そして、彼の胸元に銃を突きつけ、その顎を掴み顔を近づけていたキース=アニアン。
ジョミーの頭に一気に血が上った。
「っ・・!キース=アニアン、ブルーに何をしたんだ!?その汚い手をどけろ!!」
「・・・まだ何もしていない」
「さ、さてはお前・・・ブルーを自分のものにしようとしたな!!」
「?・・・一体何のことだ・・?」
思わぬジョミーの発言に、キースは怪訝な顔をしながら答えた。
「しらばっくれるな!じゃあ何でわざわざフィシスを解放して、あらためてブルーをさらったんだ!理由を言え・・!」
「・・・・・・・・・」
とても『だから、そのミュウの女とこいつをうっかり間違えたんだ』とは言えないキースに、ブルーは状況にそぐわないと思いながらも小さく失笑を浮かべた。
「・・・・ただの気まぐれだ。人質の中身に執着などない」
「なら返せ!」
「それはできない」
その言葉と同時に、振り返る形でジョミーを見ていたキースが彼に向き直った。壁に押し付けていたブルーの体を前にやり、後ろから彼の首元に左腕を回した。 そして、右腕の獲物を彼のこめかみに押し付けたのだった。
「こいつには色々と役に立ってもらう」
ブルーの人質としての利用価値は大きかった。
ジョミー=マーキス=シンという障害が現れた以上、なおさらその重要性は増していた。
彼を盾に、船の修理と燃料を調達するか、代わりの船を用意させる。
そんな算段をキースはめぐらせていた。
一方のジョミーは眼前の光景に奥歯をぎり、と噛締めた。 サイオンを使って力ずくで取り返すことも考えたが、それではこの男がブルーを傷つけるかもしれない。
「卑怯な奴・・・・そんなにブルーが欲しいのか・・・!」
「・・・・・」
そういう意味ではないんだが。
先程から、雲行きが怪しいのは気のせいだろうか。
鉄仮面は崩さぬまま、キースは内心、目の前の青年が次は何を言うのかと身構えていた。
「なら・・・・・・僕にも考えがある」
「・・?」
「「キース=アニアン・・・ブルーをかけてお前に勝負を申し込む・・!」」
「・・・・・・・」
こいつは何か勘違いをしている。しかもかなり間違った方向に、だ。
キースの顔が一瞬にしてこわばった。そして呆れた口調で、腕の中の人質を見た。
(・・・おい、貴様の仲間だろう。どうにかしろ)
(・・・・そう言われてもな。元はといえば、君が蒔いた種だろう。素直に言ってしまえばいい。よりによって、フィシスと僕を取り違えた粗忽者だ、と)
相談というつもりではなかったが、嘲笑すら含んだブルーの回答に、キースは言い返すこともできずに舌打ちをした。
もう、こんな茶番に付き合ってはいられない。とにかくここから早く脱出しなければ。
その時―。
いい加減状況にうんざりしていたキースの耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『・・・アニアン少佐!・・少佐!・・・どこですか!?』
「?・・・・・マツカか・・!!」
「・・・ミュウ・・?・・・・そうか、小型艇の・・」
突如聞こえてきた思念の声に、各々に声をあげたキースとジョミー。 一瞬の沈黙のあと、目的の人物の肉声を認めた送信者から返ってきたのは歓喜だった。
『・・少佐・・!!よかった・・・!今、どちらに・・?!』
(話は後だマツカ、今すぐ俺をお前の所にテレポートさせろ!)
『ええ・・!で、でも・・そんなことやったことないです・・』
(いいからやれ!!)
有無を言わさない命令に、マツカは動揺しながらも了解の返事を送った。 一呼吸置くと、自分の中の力を高め、キースの気配を辿る。
『?・・少佐、今誰かと接触をしていますか?離れて頂かないと、その方も一緒に連れてきてしまいますけど・・・・』
「・・・なに?! 」
キースは自分の状況を見た。ブルーの首に背後から強く腕を絡め、彼の右側頭部に銃を突きつけている。 その状況を解けば、腕の中のミュウのオリジンはともかく、間違いなくジョミー=マーキス=シンが行動を起こすだろう。
ソルジャーブルーを連れて行ったとしても、さして問題はない。むしろ、ミュウのオリジンは貴重なサンプルになりかねない。 しかし、ジョミー=マーキス=シンのこの執着振りから、それこそ地の果てまで彼を追ってきそうだ、と感じたキース。 それはそれで厄介なことになる。
(腕を離した瞬間に合図を出す。お前はそれと同時に力を使え)
『わ・・・わかりました。でも少佐・・内心その人のこと、連れて来たそうですけどいいんですか‥?』
マツカの予想だにしない返答に、キースの鉄仮面が音を立てて崩れた。
「そ、そんなことがあるかっ!!読むな!!」
『す、すいません・・!』
その怒号を受け、慌てて力の集中に全神経を注ぎ始めるマツカ。一方、一連の会話を聞いていたジョミーは黙っていられず噛み付いた。
「お前!!やっぱりブルーが目的なんだな!」
「っ・・・断じて違う!!」
全否定したものの、マツカの言葉は的を射ていた。
そう、自分は惹かれていた。いや、惹かれはじめたと言うべきか。
伝説のタイプブルーオリジンにではない。
目の前のソルジャーブルーという男に。
キース自身、自覚の薄かった部分をあからさまに指摘されたのだ。 心の動揺は一瞬だったが、はっきりと行動に現れた。人質を拘束していた腕と、銃を握り締めた腕とが不安定に揺れた。
そのほんの僅かな脱力の気配を、紅玉の瞳は見逃さなかった。
ブルーは突きつけられた拳銃の根元を掴むと、持ち主の力が及ぶ前に、
渾身の力でそれを引き剥がしにかかってきたのだ。
「・・・っ貴様・・!」
「くっ・・・・!」
「ブルー・・・!」
キースは反応が遅れたものの、とっさに奪おうとする動きとは逆に力を込め直した。 その瞬間、ブルーの首元を拘束していた彼の左腕に激痛が走った。 慌てて加勢に入ろうとしたジョミーが動きを止める。
「っ・・・・!」
力の緩んだ左腕から人質が逃れたのと、キースが痛みの原因を知ったのとは同時だった。
噛み付かれた。
チリチリと熱さを増してきた肘裏の感覚に、庇う様に手を当てた。痛みに歪んだ顔で前を見ると、刃物のような視線とぶつかった。 少し乱れた息を吐いて、口元を拭うソルジャーブルー。奪い取った獲物を右手に、彼は驚きを隠せないメンバーズエリートにそれを突きつけた。
「人質‥・・交替だ・・・」